木村久佳

竜とそばかすの姫の木村久佳のネタバレレビュー・内容・結末

竜とそばかすの姫(2021年製作の映画)
2.0

このレビューはネタバレを含みます

現在のZ世代が直面する問題を、当事者にはなり得ない大人が頑張って描いた映画って感じ。若者への理解が浅いし、本当のZ世代とコミュニケーションが取れていないのか、深掘りもできていない。

ヒエラルキートップの女の子が、ヒエラルキー最下位の男の子を好きになる。ヒエラルキー最下位の女の子が、ヒエラルキートップの男の子に好かれている。それが成就するにはヒマラヤよりも高い高い高い壁を乗り越える必要があるが、結構あっさり乗り越えてきてムカついた。そんなわけないじゃん…。陽キャ根アカががんばってヒエラルキー表現してみた感ある。村田沙耶香の「しろいろの街の、その骨の体温の」読んで学んでほしい。
地方出身の女の子が、大都会に飛んでいって目当ての男の子をすぐ見つけられるという展開にも「そんなわけないじゃん…」感がすごかった。主人公が歌わなくなった理由と母を亡くしたことの関係とか、うまくいかない学校生活とか、良い面を取り繕うばかりのネット社会とか。全部書きたいらしく、全部薄い。

細田守の強みは家族が描けることだと思っていたのに、なぜ母親を殺して家族を破壊して、友情?に走ってしまったんだろう。新海誠を意識したんだろうか? 新海誠の描く家族は父か母のいずれかが欠けているけど、その点細田守は大家族や両親のいる家族を描くことができるのに。バケモノの子あたりから片親が存在しない傾向はあったものの、「血が繋がっていなくても家族」という大きなテーマでとてもよかった。その点竜そばは…。残念でならない。
木村久佳

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