つるみん

1秒先の彼女のつるみんのレビュー・感想・評価

1秒先の彼女(2020年製作の映画)
3.7
【你要好好愛自己 因為有人愛著你】

何をするにもワンテンポ早い郵便局員シャオチーと常にワンテンポ遅いバス運転手グアタイの〝空白〟の1日を描いたラブストーリー。

『熱帯魚』や個人的台湾映画5本の指に入る傑作『ラブ・ゴーゴー』などを撮ってきた台湾ニューシネマの異端児チェン・ユーシュンの新作。何を血迷ったか『祝宴!シェフ』ではいつもの持ち味は愚か、ふざけ過ぎていて大丈夫か?と思っていたが、見事返り咲き。良い意味で裏切られる、唯一無二の台湾映画監督が戻ってきたと僕は思う。

台湾の恋愛ものは数多く、どの作品も基本的にはキラキラと輝かしいものや可愛らしいものが多いが、その角度から入らないのがチェン・ユーシュン。良い!
本作では〝空白〟の1日という事で、時間軸を弄る作品となっていたが、イメージするとすれば、『フローズン・タイム』と『恋愛睡眠のすすめ』を思い出す。またある一線を越えるか越えないかの問題ではあるものの若干『空気人形』味も感じられる。

徐々に伏線が回収される楽しさはあるし、雰囲気も好み。また台北という都会で混沌の中、同じような毎日を繰り返す日々であるが、舞台を台湾中部沿岸、嘉義県の東石郷に移り変えて分かる、田舎ならではの精神的充実感を満たしてくれるシークエンスは非常に台湾らしさが出ていて良かった。

せっかちで生き急いでいる事から周りに隠された幸福に気付かない主人公を客観視すると教えてくれる事は沢山あった。もう少しゆっくり人生を歩もうかなと僕は思う。

どんなに歩みが速くても遅くても、大丈夫。運命の人は必ずどこかのタイミングで交差する。


路上での車両は全てCGだが、通りの歩行者は全て本物の人間らしく印象に残るシーンの1つであった。

EDのメッセージは、OPと違い「你要好好愛自己 因為没有人愛你」なってるのも印象的。
つるみん

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