るるびっち

1秒先の彼女のるるびっちのレビュー・感想・評価

1秒先の彼女(2020年製作の映画)
4.0
マリー・ローランサンの『鎮静剤』という詩の一節。
「(中略)死んだ女より もっと哀れなのは 忘れられた女です」
人に忘れられるというのは、死ぬよりも惨めな事なのだろう。

本作の主人公は、何でも行動が人より1秒早い女性だ。
人よりも1秒生き急いでいるので、人より情報処理が早い。
だから彼女は、どんどん昔のことを忘れているのだろう。

彼女に忘れられた男が後半に出てくる。ずっと脇役として、彼女を見つめていた男。彼にとっては忘れることのない永遠の女。
しかし彼女にとっては、とっくに忘れた人。
家の中で見失って、そのまま忘れられた自転車の鍵のようだ。
忘れられたまま、新しい鍵に付け替えられる。

自分もきっと、昔の友達や知り合いから忘れられているのかも。
いや、自分だって相手のことをどんどん忘れている。
小・中・高の同級生を全員覚えている人なんて居ないだろう。
でも、忘れられるのは悲しい。

前述のマリー(本来は画家)の詩では、
退屈な女より もっと哀れなのは 悲しい女です。
悲しい女より もっと哀れなのは 不幸な女です。
不幸な女より もっと哀れなのは 病気の女です。
病気の女より もっと哀れなのは 捨てられた女です。
捨てられた女より もっと哀れなのは・・・
と、どんどん続いて、最後の最後に忘れられた女が出るのだ。

これは男も同じだろう。
不幸な人より病気の人より捨てられた人より死んだ人より・・・
一番哀れなのは、忘れられた女であり男なのである。

自分が忘れている男から、ずっと慕われてるとしたらどう思いますか。
嬉しいですか気味悪いですか。
相手による?
同じ展開でも、相手によってハッピーにもバッドにもなるだろう。
忘れられた女や男になりたくないなら、人の事も忘れないようにしないとね💦
これが、忘れられないレビューになれば良いなぁ。
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