松原慶太

レンブラントは誰の手にの松原慶太のレビュー・感想・評価

レンブラントは誰の手に(2019年製作の映画)
3.7
レンブラントを巡るドキュメンタリーなのだが、通常のアートドキュメンタリーとはわけが違う。

原題「マイ・レンブラント」が示すとおり、お家に普通に何枚もレンブラントを所有しているような人々の、雲の上の話なのである。

まずひとつが、オランダの若き画商がクリスティーズの競売でレンブラントの新作を「発掘する」話。ところが、そもそもこのヒトただものではなく、なんとかいう貴族の末裔で、祖先はレンブラント本人に肖像画を描いてもらっている。家の中に何枚もレンブラントが無造作に掛かっている。小さいころから眼が肥えているのである。

もうひとつが、ロスチャイルド家が税金対策で一対のレンブラントを250億で売りに出す顛末。これがオランダとフランスのあいだで奪い合いになる。

もうひとつは、自宅のどの壁にレンブラントを掛けるか悩んでいるオッサン(スコットランドの貴族)の話。国立美術館の学芸員まで呼んで、お屋敷の模様替えまでしてしまう。

こういったストーリーに、絵画の修復家とか、レンブラント研究の第一人者の爺さんとか、いろんなエピソードが絡んでくる。

しかしこれが何故か面白いんですね。庶民のようにあくせく働くこともせず(たぶん)、日がな一日お屋敷で美術品を眺めて暮らしている金持ちたちのレンブラント愛を聞いていると、だんだんとこっちにもその魅力が伝わってくるのです。
松原慶太

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