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MONSOON/モンスーンのSoulFoodKitchenのレビュー・感想・評価

MONSOON/モンスーン(2020年製作の映画)
4.0

あまりにも美しく素晴らしい映画です。
始まりは上空から捉えたベトナムの街並み。
交差点でバイクと車が秩序無く、ひしめき合ってる。
主人公の彼は幼い頃にベトナム戦争から逃れる為に家族でイギリスに亡命した若者。
30年振りにベトナムに帰って来た。
ベトナム語は忘れて、当時の朧げな記憶しかないけどベトナムの近代化への変わりように戸惑う。
ホテルに居ても、街を歩いても、終始、バイクの音と車のクラクションが聞こえてくる。
それは若く活気付き成長著しいベトナムの現代の姿です。
街ではベトナム歌謡が流れ外国人が集まるバーではビートの効いたダンスミュージックが流れる。
若者は英語を話し未来を見つめている。
過去と未来が交差するベトナムがある。
この映画、とにかく映像が素晴らしい‼︎
主人公の目を通して見えるベトナム。
都市の映像も、ホテルから見える景色も、車窓の風景も、古びた団地、そして床に埋め尽くされる艶やかな蓮花。
すべてが絵画的で見入ってしまう。
風景は主人公の心を通して描かれる。
それは、自身のアイデンティティを求めサイゴンからハノイへと旅を続けるけど、目に入る景色は、どこか虚で旅人からの視線に映った情景である。
何度か使われる窓越し、鏡越しの映像が印象的に使われる。
そこで視線が交わるが、それは虚な視線。
ネットでパートナーを求めて関係を持つ事も虚しさだけが際立つ事になる。
主人公はサイゴンに戻り最初のパートナーと再びビールを酌み交わす。
その彼も、父親がベトナム戦争に参加し自らも深く負目を持ちながらもベトナムの地に居場所を求めてる。
主人公の彼は両親が捨てざる得なかったベトナムの地で新たな自分と新たなベトナムの歴史を作っていく決意をした様にも見える。
詩情溢れる始玉の名作です。
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