しろめ

MONSOON/モンスーンのしろめのレビュー・感想・評価

MONSOON/モンスーン(2020年製作の映画)
5.0
30年ぶりに帰郷したベトナムに降り立ったキットは、どこか所作なさげでいまにも破裂してしまいそうな緊張感を漂わせている(うつ病の一歩手前にも見える)。

旅の途中、彼は出会う人たちから「つらそうだね」と何度も心配される。親の埋葬のために故郷に来たものの、自分はゲイであり、孤独。行く末が思い描けなくて心が疲れ切っているのかもしれない。

しかし、もがきながら、奔走しながらでもキットは前に進むことはあきらめない。
混乱しつつも、他人(出会った人たち)の物語を受け取ることで、とりあえずの自分の人生を前に進めたのだ。

キットが求めていたものが見つかったのかはわからない。でも、この旅で「これだけは信じられる」と確信を得たものは心の中にある気がする。そんな映画だった。



タイトル文字の入り方や長回しのシーン、台詞を抑えた映像美も素敵なので、ルカ・グァダニーノ作品が好きな人にもおすすめかもしれない。

日本版ポスターがロマンス相手を削除した件で当時炎上していたが、映画を観てから再度ポスターを見ると、パーソナルな物語として1人バージョンも悪くないと思うようになった(ホモフォビア的な意味で削除したなら由々しき事態ですが)。
しろめ

しろめ