MasaichiYaguchi

ワン・モア・ライフ!のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

ワン・モア・ライフ!(2019年製作の映画)
3.4
私は本作の主人公のパオロの様に女性にモテないけれど、公共のルールを身勝手さから軽く破ったり、時に自分の都合を優先して家族のことを後回しにしたりする等、いつもではないにしても過去にやった自覚がある。
自分ファーストのパオロだから、2人の子ども、娘のアウオラや息子のフィリッポから親として信頼されるどころか当てにされていない。
だから“緊急事態”で連絡を取りたくても着信拒否されていて連絡をつけることも出来ない。
そんなことだから、身から出た錆とも言える交差点での事故であっさり「あの世送り」となってしまう。
ただ自分ファーストのパオロは、すんなり「あの世送り」に納得する筈もなく天国の入口で猛抗議してごねる。
「無理が通れば道理引っ込む」ではないが、抗議によって“計算ミス”が露呈し、思わぬ92分間の“人生のロスタイム”が発生する。
ここからダメ中年オヤジの92分一本勝負、人生やり直し劇が幕を開ける。
本作の上映時間が94分なので正にリアルタイムで展開していく訳だが、過去のエピソードを含めパオロが抱く思い、そしてそれに基づく行動に賛同する迄には至らないにしても分かる中年男性は多いような気がする。
パオロは勝手気ままに生きてきた自分を反省し、一番大切な家族との絆を取り戻そうと奮闘する。
それにしても自分ファーストのパオロに妻のアガタはよく我慢しているなと思う。
アガタが何故我慢出来るのか、彼と別れないのかが終盤にその背景が紐解かれる。
僅か92分間で出来ることは限られるが、それでもパオロは精一杯の愛と懺悔で再び家族の夫々と向き合い、自分の気持ちを伝えようとする。
しかし刻一刻とタイムリミットは迫ってくる。  
果たしてパオロの92分間の“ロスタイム”は何をもたらすのか?
私を含めて疑似パオロおじさんは、彼のように“ロスタイム”が与えられる訳ではないので、今日から心を入れ替えて生きるよう努めたい。