April01

U・ボート ディレクターズカットのApril01のレビュー・感想・評価

5.0
以前見たのは、短い劇場公開版だと気づき、改めてディレクターズ・カット版を再見。
ラストで呆然となり、気持ちが置いてきぼりになるモヤモヤとしたやるせない感情が沸き起こり、またもやブチ切れ状態になる。
時は流れても自分は全然大人になれてない😅

冒頭から全てが素晴らしい。
観る者の気持ちをこんなにも支配する凄い力を持った作品。
潜水艦内の様子はもはやサスペンス。
心理戦のような緊張感がずっと続く。
キャラクター一人一人に命が吹き込まれているよう。

序盤の勲章授与式の煌びやかな場の中で、軍上層部への皮肉と、現場の白けた諦めが、退廃的な空気の中にしっかり描かれていることに感嘆する。
さらにシンガー兼ダンサーが、よく見ると化粧の濃いオバサンのくせに、スタイルが良くて歌も踊りも上手くて場を盛り上げているところが、敗戦に向かう現実を覆う虚飾のようだし、トイレのゲロの場面なんかは、その後のUボート内で起きる悲惨な状況を暗示しているようで、何回見ても飽きない。

もちろんテクノロジー面で古い作品だから、海に出てからの映像は合成ぽいとか今ならCGでいくらでもカバーできる技術面の劣りをマイナスと評価することもできる。でもそういう減点方式の評価はしたくないな、本作については。

俳優さん達の演技、全然キレイに映ろう、映そうとしていないっぽいところがいい。
汚いし不潔だしシラミだのカビだのとてもリアル。
一応集団だけど、不安、緊張感、恐怖、怒り、悲しみ、一人一人に細かい演出をしていると感じる。

これを戦争映画と呼びたくない気もする。
極限状態におかれた集団を描いた芸術作品。

エンジニア、技術者がいなかったら何もできない、そして彼らに指示し統率する指揮官も必要、けれどそのまた上に戦争の采配をとる司令官がいてその上に政治家がいて・・・という構図。

広い意味では「現場」を描いているという点で普遍的な共感を得られる映画だと思う。

ウォルフガング・ペーターゼン監督の訃報に接し、とても寂しい気持ち。素晴らしい作品を残してくれたことに感謝。ご冥福をお祈り申し上げます。


語録:
ジブラルタル海峡
処女のように狭い
通る時に艦にクリームを塗れと?

余談:
いざという時、タダ同然の針金がない。
見つけてバッテリー全滅の窮地を逃れるくだり。
前に見た時、針金いくら?買っておきたいと、ホームセンターぶらついたのを思い出す😅
April01

April01