アニマル泉

アポロンの地獄のアニマル泉のレビュー・感想・評価

アポロンの地獄(1967年製作の映画)
4.5
パゾリーニは造形力が素晴らしい。フェリーニやパラジャーノフに比肩する造形力だ。仮面、兜、儀式、ギリシャ悲劇の「オイディプス王」を見事に造形化している。パゾリーニは「荒野」の作家だ。本作も撮影地のモロッコの荒野と青空と白い雲が厳格な美しさだ。
忘れられないのが、寝られない少年が外光で浮き上がるカーテンに誘われるように近寄り、カーテンを開けると、向かい側の窓に抱き合う母と父のシルエットが浮かぶ官能的な夢のような場面だ。パゾリーニが育てたベルトルッチの「ラストエンペラー」のあの圧巻の戴冠式の場面のまさに原型である。
パゾリーニらしく本作はセリフが少ない。字幕で説明が挿入される。冒頭から唖然とするくらいセリフが無い。虫の音がずっと響く。パゾリーニは音が面白い。本作も虫、蛙、泣き声、日本の邦楽が響く。本作は自らの眼を潰すという有名な悲劇であり、「見る」ことがテーマになっている。真実が見えているか?見なくていい事に振り回されていないか?オイディプス王に運命を告げる預言者も盲人だ。それゆえ本作では対する音の表現が繊細で大胆になっている。特にラストの笛が印象的だ。
パゾリーニの「火」の主題も、鮮やかな色で包まれた遺体が火葬される場面が鮮烈だった。
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