てっちゃん

アポロンの地獄のてっちゃんのレビュー・感想・評価

アポロンの地獄(1967年製作の映画)
4.1
変態詩人こと、パゾリーニさん続きます。
パゾリーニさん作品って、戯曲や神話を基にしている作品が多いから(というか私がその類しか知らない)、原作なりあらずじを知っていないと、なかなかきついものがあるかもしれない。

というのも、まさに私が頑なに下調べはしないで挑むので、パゾリーニさんに翻弄されるのも珍しくはないのです。

もちろん本作に於いても、下調べ無しで挑んだ訳ですが、頑張って集中せずとも、どんな話であるのか分かるくらいにパゾリーニさん作品にしては珍しい親切設計ではないでしょうか。

他作品に比べて、パゾリーニさんの主張というか意見というか、彼自身を感じさせる”何か”があったのが大きいのではないでしょうか。

物語を簡潔にまとめると、主人公は「お前は父を殺すだろう。そして母と情を通じるであろう。お前の運勢は呪われている。」と神託を受ける。
物語は主人公が、その神託を避けるようにし旅をする。
その旅の道中で、とある人物を殺す。その人物が実は、、みたいな感じ。

本作はそれだけで物語を描ききるのではなく、現代(=パゾリーニさん)も物語の前後にいれるという驚きの仕掛けがある。
調べてみたら、この現代こそがパゾリーニさん自身のことであるみたい。
道理で、本作を観て感じた”何か”があったわけだ。

それでは、気に入った箇所とか感想を。

・能?曲がきたぞ。
パゾリーニさん作品って、幻想的で神秘的な音楽が耳に残るイメージがあるけども、本作でもそれは健在しており、能?みたいな曲が要所で使用されているのが印象的で、きたきたきた!と反応してしまうのは、パゾリーニさんあるあるなのでしょう。

・大絶叫ダッシュ
これもパゾリーニさんあるあるではないでしょうか。
本作は大絶叫しながら、さらにダッシュもしてくれるので、二度おいしいのです。

・王を殺したときのドアップの凄みよ
この凄みは圧倒されます。
逆光での眼力の凄まじさを見るがよい!って感じで痺れる。

・メッセンジャーの彼はやはりメッセンジャーだったのだ
パゾリーニさんの傑作「テオレマ」で登場するメッセンジャーの彼。
その彼が本作でもメッセンジャーとして登場する。今回も飛び跳ねてます。

・「人生は始まったときに終わるのだ」
出ましたね!痺れる格言!
これはぐさりときますね、、この駄文を書いているのも、終わりに向かっているのです。
この格言にぐさりとやられたので、この辺で終わらせます。

パゾリーニさん連続は、なかなかお腹いっぱいになりますね。
てっちゃん

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