がちゃん

アポロンの地獄のがちゃんのレビュー・感想・評価

アポロンの地獄(1967年製作の映画)
4.0
父を殺し母と交わり、
すべての光を失ってしまうギリシャの古典戯曲、
『エディプス王』の物語を、
パゾリーニ監督が異様な感覚で描き切った傑作。

コントラストを強調した画面が、
荒野の風景を異次元の世界のごとく見せる。

逆光を多用した、
いかにも重い剣を使っての殺し合い。
鈍くて生々しい光を放つ。

無数に横たわる腐乱しかけた死体。
時折挟まれる緑の風景との対比が独特の迫力を生み出す。

自分の両目を潰して盲目となったエディプスを、
パゾリーニ監督は現代のローマにまで放浪の旅を続けさせる。
運命とは言えとても残酷な演出だ。

この時空を超えた異常な古典劇は観客に考える時間を与えることなく突然終わる。

筋を追って観る作品ではなく、
その表現主義的なパゾリーニの世界にただ身を任せる、
そんな作品です。
がちゃん

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