空海花

アウシュヴィッツ・レポートの空海花のレビュー・感想・評価

3.7
舞台は1944年4月、ポーランド南部のアウシュヴィッツ=ビルケナウ収容所。
遺体の記録係をしているスロバキア人のアルフレートとヴァルターは脱走を実行する。
彼らの願いは、この惨状を外部に知らせると共に
収容所を爆撃してほしいというもの。
これは他の収容所に残る人々の願いでもあった。
監督はスロバキア人のペテル・ベブヤク
アカデミー賞国際長編映画賞のスロバキア代表作品。

脱走を試みる2人と
収容所に残された人々
どちらにも苦難が降りかかる。
自分たちもろとも爆撃してほしいのは
もうここにこれ以上送られる人があってはいけない。
終わらせなくてはならないから。

収容所の非道な行いは丁寧に説明されるが、引きで撮るなど直接的に眼を覆うような映像は避けているように思う。
だが死体の山が鮮明に物語る。
脱走計画の方法や経緯には驚きがあった。
また途中から視点をアルフレートに持ってくる狙った構図が印象的。
勇気ある若者2人の演技も良い。

アウシュビッツ収容所での惨状は当初知られていないのは知っていたが
赤十字社での会話の温度差といったらない。
事故のくだりは鳥肌が立った。
この辺りの描写はもう少しあっても良かったような気もするが、こういう構成もありなのかもしれない。

ジョージ・サンタナーヤ「過去を忘れるものは必ず同じ過ちを繰り返す」
この映画の本当のクライマックスは
エンドロールに訪れて、衝撃を残す。
やってることは同じだよ、と
強烈な皮肉を思ったことがあるので
共感してしまった


以下ネタバレ気味な補足・感想⚠️


2人のレポートは、
通称「アウシュビッツ・レポート」と呼ばれる「アウシュビッツ・プロトコル」を構成する報告書の一つ。
このレポートによって、英国のチャーチル首相は、ブダペストからアウシュビッツへ向かう鉄道路線の空襲を命じ、鉄道での移送が不可能になったことで、約12万人のユダヤ人の命が救われたという。
だが、直前に観ていた『復讐者たち』の
“600万人”が頭を離れていないので、
光を感じるには至らない。
収容所の人達の思いを背負った2人の行動は賞賛できるが
収容所に残った彼らの気持ちに応えることはできなかった。
彼らの無念を想像したり
個人の限界の壁が重くのしかかってきた。
アウシュビッツ収容所の機能停止が実現されたのは、
翌年のソ連軍によるポーランド侵攻による。
レポートは、正式には44年11月に米国戦争難民委員会から発表・出版。
戦後1945年に行われた歴史的なニュルンベルク裁判においても証拠として用いられた。


2021レビュー#150
2021鑑賞No.317/劇場鑑賞#53


ワクチン2回目の副反応がハンパないです😅
空海花

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