晴海通り

スペンサー ダイアナの決意の晴海通りのレビュー・感想・評価

3.8
歴史上の亡妃としか分かち合えない、死にたいほどの孤独から身をかわすように踊る。

彼女が離婚を決めたクリスマス。神経質なまでに美しいクリステン・ダイアナ。その研ぎ澄まされた横顔がスクリーンに大写しになるたび、息を飲むほど。いや、自宅のテレビなんだけど(笑)ほんと綺麗なんですよ。クリスマスの晩餐の衣装なんてほんと、この世の夢みたいに。でもどこまでも悲しい。彼女の表情は晴れない。

そのダイアナの胃の痛みがこちらまで伝わってくるようで。夫の愛は移り、処刑台のツユと消えたアン・ブーリンの幻覚まで見る。厳格なしきたりは彼女の心まで縛ろうとする。かわいい子供は愛の対象だが、まだ幼くて彼女の味方とは言えない。むしろ彼女が守りたいもの。しかし不安定な彼女はそれさえ巻き込んでしまう。

美しく揃えられた衣装も彼女を守りはしない。むしろ縛るための鎖。せめてもの抵抗か、彼女は用意されたのと異なる服を選ぶ。たったそれだけのことでも「彼女のミス」と言われる。周りには、王室全体と女王を頂点としたヒエラルキーが全て。そして私たちは、彼女がコインになり短い名で呼ばれる日が来なかったことを知っている。冒頭の轢かれたキジが不吉。

まぁでも現役王室の、多くはご存命の皆さんをこういう作品にできるのは、いつもすごいなと思う。英国王室の懐と業の深さというか。

もちろんフィクションなのだが(ケンタッキーを買うシーンは本当にあったらしい)、少しでも晩年の彼女に自由と笑顔と愛があったならいいと思わされる作品でした。チャールズ役の人の抑えた演技もよかった。
晴海通り

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