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オハナのLCのレビュー・感想・評価

オハナ(2021年製作の映画)
4.0
面白かった。

Finding ʻOhana という題名の通り、オハナとは何かを見つける冒険物語。
Finding には実証とかって意味もあるのだけれど、作中で主人公たちは探し、発見し、その存在の証を肌で感じられるように見せてくれる。それは実際に手で触れられる金銀財宝のことだけじゃないんだね。

ʻOhana は家族という言葉に置き換えることができるのだけど、この家族には「血の繋がりはなくとも、その絆を持つ者」も含まれるみたい。養子とか、それこそ配偶者とか。他にも、何かの制度で家族と定められた訳ではない関係、例えば「親友と一緒に住んでる」とか、そういうのも全部ひっくるめてオハナなんだね。
父親があの時守ってくれたのは、血の繋がりのある我が子との絆も勿論だけど、義理父も妻も、そして我が子と共に困難に立ち向かってくれた少年も女性も、同様にオハナだから、ということなんだろう。

主人公のお兄さんが「 Ioane は素敵な名前なのに、何で E と名乗るの?」と聞かれる場面があるけれど、問いかけた人は「慈悲深い神さま」なんて、こんな人だと勿体無いとも思っていたかもしれない。そんなことないかもしれないけれど、そう思えるくらいに、とても言葉や信条を大切にする人だった。
死者の眠る神聖な場所へ入る時も、自分に夢中で蔑ろにされている少年の隣にいる時も、自らの恐怖を抑えて子どもたちに笑いかける時も、彼女の姿勢は貫かれていた。
それは、目に見えない存在に対する敬意とかって表現できるかもしれない。人の気持ちも、肉体を失った魂も、言葉も、改めて考えてみると見えないものたちだ。時々見えてる気がしちゃうけれど、耳目に届かない部分があるのも確かだ。
そして、恐らくこの敬意をというものを、主人公のおじいさんも保持しながら生きているんだろう。
目に見えないものに対して敬意を持つ姿勢を、主人公もそのお兄さんも、顔に擦り傷作ったりしながら少しずつ掴んでいく。
それにしても、お兄さんは彼らの姿勢を理解しやすくしてくれる対比として優秀で、見ていてクスッとする場面も多い。そうかあ、君が神かあ。

主人公の母も、自身の父親との関係で苦しかっただろうけれど、子どもたちとは違い大冒険はせず、ぐっと耐えて、耐え抜いて、父親の言葉を受け止めていた。
そんな様子を見ていて、子どもたちのわんぱくはお父さん譲りなのかな?と思ったりしたけれど、おうちで怪獣どーんする感じの、そんなお父さんだったんだね。
でもきっと、母親の忍耐強さも受け継がれているだろうと思う。何だかんだ、兄妹で支え合ってきていたんだから。

本作、名前の意味とか、結局住むとこどうするよとか、ハッキリと見せてくれないものもある。
でもきっと、それでも伝わってくるものを大切に受け止めることができれば、それでいいんだろう。
彼らがこの先どこで暮らすとか、きちんとみんなで話し合いを重ねて誰の気持ちも置いていかないようにするだろうし、歌う為に故郷を出て行くか否かも彼女は考え抜いて決めるだろうし、「すぐに結論を出せないことを、考え抜く、迷い抜く、結論を探し抜く」という姿勢は伝わってくる。
主人公たちも、宝物を探し抜いた結果、納得してそれを手放したわけだし、手放して後悔していないことは表情を見ればわかるものね。

主人公が吹き替えする日記の物語はとてもかわいかった。おじさんたちが… 女の子の声の通りに話したり動いたりしていて… ほのぼのする… お兄さんもやるんかい… お揃いのポーズを決めるところで声が出ちゃったのは内緒。楽しかった。
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