hasisi

パーマーのhasisiのネタバレレビュー・内容・結末

パーマー(2021年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

監督は、フィッシャー・スティーヴンス。
脚本は、シェリル・グエリエッロ。
2021年にApple TV+で公開されたドラマ映画です。
※アラスジを最後まで。その後に感想を。⚠️

【主な登場人物】🌉🚌
[ヴィヴィアン]祖母。
[エミリー]サムの友人。
[コールズ]警察官。
[サム]少年。
[ジェイク]ダリルの息子。
[シェリー]サムの母。
[ジェリー]シェリーの恋人。
[シブス]先輩。
[ダリル]子持ちの友人。
[トビー]ダリルの下の息子。
[ネッド]長髪の友人。
[パーマー]主人公。
[フォーブス]校長。
[マギー]サムの担任。
[ルシール]コールズの妻。

【概要からアラスジへ】🏫👪
スティーヴンス監督は、1963年生まれ。イリノイ州出身の男性。
ユダヤ人。
16才の時、1981年に公開された映画で俳優デビュー。
ブロードウェイで30年のキャリアを積む。
監督としては95年にデビューで、12作目。ドキュメンタリーが多い。

脚本のグエリエッロは、女性で詳細不明。
長編3作目。
副業なのか、キャリアの長さのわりに作品数が少ない。3つともジャンルが違うが、田舎、学生時代の辛い記憶、家探しなどの共通点が見られる。

🧚🏻〈序盤〉⛪🍺
米国。南部にあるルイジアナ州。元はフランス領だった場所。
銀色の古びたバスがポンチャートレイン湖にかかる世界最長の水上橋、コーズウェイを南下してゆく。
バスは州のどこかにある寂れた町、シルヴェインに到着。バックパックを肩にかけた30代の髭面の男が降り立った。
刑務所で12年を過ごしたエディ・パーマーは、母方の実家へ。
驚いた祖母のヴィヴィアンが孫の帰郷をハグで歓迎した。

祖母はすでに運転免許書を没収される年齢に。
部屋は学生時代そのままだった。
とりあえず、2週間後に待つ担当官の面談に向けて職探しに。

仕事を断られつづけて数日が経過。バーで友人たちと再会した。ダリルは再婚して2児の父に。コールズは父の後を継いで警察官になっていた。
家に戻ると、隣に止めてあるトレーラーハウスで暮らす女、シェリーとばったり。パーマーは久しぶりの飲酒と誘惑で猛り、彼女と一夜を共にした。

日曜日の朝。シェリーの7才になる息子、サムを紹介された。祖母と仲がよく、パーマーは2人を車に乗せて礼拝へ。
ランチの後、サムが女子に混じって楽しそうに踊っているから、ダリルが「あいつ相当やばくないか?」と怪訝な顔をした。

翌日。シェリーは男と一緒に遠出。祖母はいつものようにサムを預かっていた。
サムは長い前髪をピンで留め、祖母の白い髪を梳いて化粧を手伝っている。

サムが通うシルヴェイン小学校で用務員に空きが。フォーブス校長には犯罪歴を嫌がれるが。高校時代にアメフトで2年連続の全米選抜。特待生で州立大学に入った経歴は評価。
祖母が敬虔な信者であることも後押し。
先輩のシブスも、刑務所での庭仕事や掃除経験で推薦してくれて。
なんとか職にありつけた。

すべてが順調に思えた矢先、祖母はベッドで冷たくなっていた。
葬儀の後、家に戻ったサムは祖母の口紅を塗って手鏡を見ていた。

🧚🏻〈中盤〉🛋️📺
サムは、コールズの娘で同級生のエミリーと仲良くしている。仕事を終えたパーマーは、コールズの自宅にサムを迎えに。
ルシール夫人に誘われてお茶の時間。子供たちのママゴトに付き合う羽目に。
夜はダリルの息子が出場する高校生のアメフトを観戦。サムの世話をしているから「シェリーはやめておけ」とダリルはニヤニヤする。

休日は、サムの担任、マギーに誘われてボーリング。ハリケーン被害者のための救済コンペに参加する。
休憩時間。ゲームコーナーで遊ぶサムを待つ間、マギーと会話に。パーマーは大学1年の時に刑務所に入ったが、狭い町なので事情はよく知っている様子。
マギーはジョージア大学の卒業生。以前は結婚してアトランタに住んでいたらしい。離婚後にいとこが暮らすシルヴェインに身を寄せたのだとか。
「この町は少し保守的ね」

サムを連れて外出。仮釈放事務所を訪れ、担当官の面談を受けるが今回も無事に終了。
帰りに喫茶店により、ルート・ビア・フロートを飲む。
ドクターペッパーとバニラシェイクを合わせたような味で、地元の若者御用達だが、サムはネグレクトされているので初体験。
あれ以来、シェリーは1度も家に戻っていない。

祖母の寝室はサムに提供。昼の弁当はクッキーをカバンにつめるだけだったので。朝からパーマーがマスタード入りのサンドイッチをつくる。ファスナーつきのプラスチックバックに入れて手渡した。
サムの誕生日会には、マギーとエミリーがお祝いに。パーマーからはウクレレをプレゼント。
溜まっていた手紙をマギーが整理してくれ、弁護士からの封筒が。
祖母の遺言には、家と土地は売却して、金は教会に寄付。孫には5000ドルを渡すように書かれていた。

ハロウィーンの日。サムはピンクのドレスに妖精の羽。好きなアニメ、「ペネロピ姫」の衣装を買い与えたものだった。
教室では女装をダリルの次男、トビーにいじられる。だが、マギー先生がスーツ姿で男装して登場。校長のモノマネをして生徒を楽しませた。

夜はマギーとビール。刑務所に入った理由を聞かれ、正直に話しはじめる。
アメフトの影響で脳の機能疾患に。手術して完治したが、プレーは続けられないので大学も退学。
地元に戻ってからは薬物依存に。当時近所に暮らしていた金持ちの家に侵入し、銃を持った主と遭遇。バットで殺しかけた。
マギーは「人は変われる」と慰めてくれて、ベッドを共にした。

🧚🏻〈終盤〉🌃🚗
仕事終わり。パーマーは引っ越し準備の進む自宅で、マギーと事後を楽しんでいる。そこへ、サムが泣きながら帰宅。
コールズの家でお茶会をしていたはずだが、顔中ピエロのような化粧をほどこされている。同級生のトビーに苛められたのかと思えば、父親の方。友人のダリルがやったと知り、パーマーはマギーが止めるのを無視して車を走らせた。

馴染みの酒場へ。
ビリヤードをしていたダリルは「あいつがドレスを着ていたから」と笑ったが、パーマーはいきなり右フック。馬乗りになって何度も拳を振るう。
帰宅してからは、マギーに「暴力でサムを守れる?」と怒られ「眠るまで貴方の名前を呼んでいたわよ」と悲しい顔。

翌朝。心配するサムは、パーマーにバンドエンド。
2人は「ペネロピ姫」ファンクラブに手紙を書く。サムが番組の魅力を語り、パーマーが代筆する。サムがサインして手紙を送った。
団らんを切り裂くように、久しぶりにサムの母親、シェリーが帰宅。ヴィヴィアンにお悔やみの言葉を贈ると、荷物を持ってサムを自宅に連れ帰った。

シェリーは、彼氏のジェリーの家に引っ越す計画だったが。
DVで通報されたのか、サムは児童保護局へ。仕事を終えたパーマーが出向いても、血の繋がりがないので面会もできない。
薬漬けには任せておけないので、後見人を買って出るが、「余計なお世話」とシェリーに怒鳴られる。

裁判所ではサムの養護施設送りが決定し、一時帰宅。
パーマーは、ジェリーがシェリーに暴力を振るう現場に遭遇。母を助けようとしたサムが突き飛ばされるのが窓越しに見えて。思わず介入してジェリーを突き飛ばし、サムを車で連れ去ってしまう。

夜。コールズに連絡して帰宅すると、そのまま誘拐の疑いで逮捕。サムは嫌がり、パーマーの名前を呼びながらパトカーを追いかけていた。
留置所で過ごすつもりだったが釈放に。
「夕食に連れ出しただけ」と、シェリーが擁護したらしい。

マギーが一時的にサムを預かり、彼女の自宅で一夜を過ごした。
早朝には、しらふのシェリーが訪ねてきて、親子2人で大事な話に。
「色々考えたけど、今後はパーマーと暮らすといい。あんたを大切にしてくれるはず」
薬から抜けられない弱さを正直に打ち明け、泣きながら別れのハグをした。

パーマーとサムは一緒に登校。夜はマギーの家で夕食の予定。
先輩のシブスから仕事ぶりが認められて、校舎の鍵を渡され、
「よく頑張っている」と優しく肩を叩かれた。

祖母の家は無事に売れて、2人で最後の荷物を車につめる。
郵便受けに手紙が入っていて、それは「ペネロピ姫」ファンクラブからだった。
会員証と「プリンセス・クラブへようこそ」と書かれたイラストが入っていた。
サムは嬉しくてパーマーにハグ。笑顔の2人は本当の親子のように抱き合っていた。


【映画を振り返って】🏈🎒
シェリーの男がジェリーって。
ドラマなのにコメディの色が見え隠れ。

湿地帯の暗い色調で、パーマーはずっと困り顔。
食事中に下から顔を照らすなど、ライティングが変。
苦労話のお涙頂戴路線で、期待薄。ネタは少ないが、なぜか子供は妙に明るい。「変な家族だな~」と思いつつ、なんとなく見ているが、
一発いっぱつが重い。
イベントの順番も変で、意図的に演出しているとしたら独自路線だが。
天然だろうなぁ。

映画の主題がまったくわからず。
何が理由でこんなに時間をだらだら過ごす映画を撮ったのだろう、で挫折寸前。
後半に入ってから、やっと映画のテーマが明らかに。
疑似家族でゲイの子供を育てる、だった。
「めちゃくちゃ時間かけたな」

🔑セカンドライフ。
幸せとは? を考えるにはいい映画。
捻りなしで真っすぐ描いてある。
中年には余計に心に染みる。

さり気ない描き方で心地いい鑑賞後感。
アメフトで成功するのもいいけど、用務員としての第二の人生を認められるのも、また違た良さがある。
……用務員も引退してさらに第三の人生に入った人が近くにいるから、人生は長い。
(長すぎる)
やりたい事を見つけるのが楽しむためのコツ。
嫌なことは忘れる。馬鹿になる、歩き続ける、は立派な才能だ。
まあ、パーマーの場合は、イケメンだから奥様連中にモテモテで忙しいだろうけど。

👨🏻‍🍼また子育てしたい。
「ネグレクトするのだったら、私が代わりに育てる」
『カモン カモン』のように。
これも子供が手を離れて、生き甲斐を失った人の願望を形にしたような映画。
脚本家の過去作と比べて、男性主人公に挑戦しているのだが。
女性が女性から子供をもらい受けると、あからさまでノリにくいのかも。
不器用なイケメンが子育てに挑戦している姿は絵になる。

劇中で「サムを養護施設に」が選択肢として提示されるが。
自宅ではないので肩身が狭く、苛めもあるので、パーマーの心境としては出来れば送りたくない。
DVから離れるのは大事だが、離れた先にも地獄が待っているので、解決は容易ではない。

特徴としてはイベントが具体的。
送り迎えや喫茶店で休憩など。
時間が長くとられている分、子供を気にしているシングルファザーが、画面の向こうで生活している感覚が得られる。
友人の日常と重なる。
ジェリーも元妻の新しい男にしか見えなくて、親近感が沸いた。
(旦那の刺さるような視線ほど恐ろしいものはない)

職場と恋愛と見守りが学校にコンパクトに収まっているのも魅力。
作家の願望が詰められていて、好感が持てた。
好きなものを映画に。
何でもいいので、作り手が楽しんでいれば、観客に幸せが分け与えられる。
hasisi

hasisi