てつこてつ

ヌードの夜/愛は惜しみなく奪う ディレクターズカット版のてつこてつのレビュー・感想・評価

2.5
1993年製作のオリジナル版の雰囲気がとても好きだったので、17年もの歳月を経て、同じ石井隆監督の手で正統続編が製作されていたと知り、U-NEXTで早速鑑賞。

ディレクターズカット版・・すなわち、上映時間を度外視して、監督が作品内で描き出したかったものを全てぶっ込んだ内容というのは、良い方向にも悪い方向にも転ぶもので、例えば、個人的には「ミッドサマー」なんかは前者であったが、本作に関して言えば、監督のマスタベーションを146分にもわたり延々と見せ続けられた感が強い。

本作でヒロインを務めた佐藤寛子は、その登場シーンの半分くらいがほぼフルヌードというその根性と女優魂は買うが、“身体を張った演技”で女優の力量が必ず伝わるかと言うと、本作に関しては明らかに違うと感じた。

93年版のヒロイン余貴美子は、胸までしか見せないが、物語上、重要な意味を持つ本当に必要なシーンだけで使われていたので非常に効果的にラストのベッドシーンが活きる展開となっていた。

前作同様に竹中直人が演じる“何でも代行業者”も、顔立ちはそこまで老けた感は無いのだが、佐藤寛子とのベッドシーンでは、彼女の若くて豊満で美しい肢体とは対照的に、シャツを脱いだ竹中直人は、17年の歳月は男にとっても残酷なもので、93年版の脂ぎった中年男の壮健な肉体とはかけ離れた肩の骨が透けるような老体で、少々痛々しく、また、この二人が惹かれ合うという設定にはどうしても無理を感じた。

他の主要キャラクターに関しても、前作では必要最小限でありながら、根津甚八、椎名桔平が非常に役にもハマり印象に強く残る演技を見せてくれたのに対し、本作の欲望のままに男たちを殺していく母娘を演じた大竹しのぶ、井上晴美は演技力は凄いのだが、あまりにも現実離れした感。

また、都合良く登場する女性刑事役の東風万智子も、一人だけキャラが浮いており邪魔だなあ。

クライマックスにいたっては、ほぼサイコホラーで、前作が全編通して持っていた男女間の情緒であったり、上質なフィルムノワールの雰囲気が削がれてしまっているのが残念。

前作で象徴的、かつ重要なシーンでとても効果的であった主人公が住む部屋のネオン照明も、本作では、まるでMOMAのモダンアートのコーナーに展示してあっても驚かないほど派手派手しく、主人公のキャラには全く合っていない。
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