KUBO

プリンセス・ダイアナのKUBOのレビュー・感想・評価

プリンセス・ダイアナ(2022年製作の映画)
4.0
素晴らしいドキュメンタリーだった。

ドキュメンタリーで一度も眠くならずに、最後まで画面に食い入るように見てしまったのは初めてかもしれない。

もちろん誰もが知る波瀾万丈な人生の記録だから、退屈するわけはないんだけど、ニュース等で知ってるはずのひとつひとつの事件に改めて引き込まれる。

一切ナレーションは入らない。入るのはソースとして使っている当時のニュース番組やインタビュー番組の司会者の台詞だけ。要するに記録映像をつなげただけの構成なのだ。

19歳のこの美しいプリンセスと結婚しながら、ずっとカミラ夫人との不倫を続けていたというチャールズ(現国王)。あの結婚前の初々しい頃からダイアナは愛されていなかったのかと思うとかわいそうでしょうがない。それにあの絶世の美女ダイアナよりも、あのおばちゃんの方がいいというチャールズの気持ちがまーったくわからない! たぶん全世界の男がわからない!

作品内では「憶測」や「噂」は全く語られないけど、当時誰もが思っていた「ダイアナとエジプト人の大富豪との恋愛を許せなかった王室に暗殺された」説とか改めて考えさせられた。

ダイアナが死んでもエリザベス女王はロンドンに帰っても来ずに、バッキンガム宮殿には半旗も掲げられなかったと言う。

だが多くの国民のダイアナを悼む声に押され、国葬を執り行うことになるのだから、これこそが真の「国葬」のあり方だろう。国葬を執り行う「国」とは「内閣」ではなく「国民」だ。

エリザベス女王の死後、王となったチャールズが和やかに国民と接する様子がテレビで報道されていたが、このドキュメンタリーを見ると、とても許すわけにはいかないという思いの方が強い。エリザベス女王は「カミラをクイーンに」とは言ったが、きっと国民は認めないだろう。カミラは永劫、死したダイアナと比べられるのだ。

先日『スペンサー ダイアナの決意』を見たばかりだが、こちらの劇映画は辛いところだけに焦点を当てたような作品なので、ぜひこのドキュメンタリーも見て補完し合うことで、また多角的にダイアナ像を捉えることができよう。
KUBO

KUBO