垂直落下式サミング

プリンセス・ダイアナの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

プリンセス・ダイアナ(2022年製作の映画)
4.5
とりあえずホンモノの映像の切り貼りだから、ダイアナ妃がどんだけ人気だったのか、この現象の嘘偽りのない真実が写されていると思う。
ちょっと、とんでもない熱狂っぷり。英国全体の熱烈な歓迎ムードはある種のフーリガンのようで、特に結婚式の日なんかはお祭り騒ぎ、ダイアナ妃のことは歴史としては知ってたけど、想像してた何倍もスゴくてビックリした。
王子さまに嫁いだ庶民のお姫様として大注目されて、(スペンサー家は由緒正しき貴族の血筋らしく、まるっきり庶民ってわけではないのだけど。)たったひとりで王室の人気を爆上げしたあと、そこからお騒がせセレブ化して、それでも腐らず福祉関係の慈善活動家として活動して、最期はパパラッチに追い回されて悲劇の最期を迎えることになる。
本当に立派な人だったらしい。マンデラやマザーテレサと並んでいる写真はみたことあったけど、映像でははじめてみた。ホームレスとはなすし、病気の赤ちゃんも抱き抱えてる。徳が高すぎます。
最後のUNOのシーンは、どこから出てきたんだろう。たまたま死んだ日に撮影してた民間のホームビデオってことなのかな。だんだん事故報道が信憑性を帯びてくると落ち着きがなくなってきて、訃報が流れるとみんな顔が青ざめてショックを隠しきれないようすだった。本当に愛されてたんだ…。
映画でも、ドキュメントでも、チャールズ皇太子はちゃんと悪者。たまご投げつけられてる現状をみるに、彼は国王になってもまだ人生の負債を清算してる最中ってことか。
チャルカスは、死後20と余年経ったいまでも人徳と実績が評価され続けるダイアナさんとは対照的に、掘り返されると都合の悪いことしか出てこないのが救えない。家庭人として悪かっただけで、丸っきり悪人ってわけではないにせよ、脛にばかでかい傷のある人生はツラいだろうぜ。
自分の振る舞いの一挙手一頭足がみられてるってわかってるはずだったのに、それをみた人が自分をどう評価するかにまで思い至らなかったのは皮肉で悲しいロイヤルジョーク。
特殊な家庭事情過ぎて、どら息子呼ばわりは恐れ多いから、彼視点ではどんな感じだったのか映画にしてほしいですね。当然、罪と罰から目をそらさずに。
偉大な母親の愛を受けられずに、役割に縛られながら生きていく息子っていう題材は、僕の胸の傷にもフィットすることでしょう。