かんふーきゃっと

アフリカン・カンフー・ナチスのかんふーきゃっとのネタバレレビュー・内容・結末

3.7

このレビューはネタバレを含みます

○パッと見で分かる、もはや何も言うまい、というこの感じ。申し訳ないが、棚に戻してもいいけれど、少しだけお話しさせて頂きたい。本作は確かにZ級のジャンルではあるものの、話の構成自体はなかなか堅実で、全編を通して安定している良作なのだ。

○まずは無視出来ないレベルのチープさから触れていこう。冒頭に経緯説明を地の文が頑張るのだけど、画の説得力が低過ぎて話が全然入ってこない。ただでさえ「は?」みたいな設定なのに。
 職業役者皆無疑惑。私的にはこれは味なのでオーケー。一番浮いているヒトラー役も監督なので許す。
 人が少ない。軍隊も村人も観客も少なくて見過ごせない違和感を生んでいる。一部街中ロケでは、エキストラではないただのギャラリーに囲まれているのはご愛嬌。

○吹替が個性的。本作は何故かほとんどの登場人物が関西弁なのだ。それもコッテコテのエセ関西弁。そしてこれがびっくりするくらい合っている。良い仕事でグー。

○そしてこの映画の一番の魅力。それはカンフー映画に対する圧倒的なリスペクトである。ジャッキー・チェンの『蛇拳』『酔拳』を中心に、道場ものの時代劇カンフーの王道展開を見事に再現している。道場での練習、厳しい師匠、ライバル、武術大会、さらわれる恋人、達人に弟子入りし復讐のために修行。これらをヒトラーと東條英機以外はオール黒人で行なっている。新鮮。
 とにかく監督の香港映画愛が強く、全てがカンフー映画の様式美に則って話が展開されるので、私にとってここはアフリカなのにまるで実家のよう。急に雑になるところも多いが、ワザとなんだろうなとニヤニヤ出来る。何度も流れる処刑用BGMと恐らくは『片腕カンフー対空とぶギロチン』のオマージュである、やたらきっちりとした審判(行司)が好き。

○余談だが、東條英機役はお監督のお友達の日本の素人さんらしい。この人が良いキャラしていて、挙動が実に日本人。香港映画にありがちな適当描写の日本人像を、ちゃんと日本人がその通りに演じるという面白さ。慣れないアフレコのせいで、吹替版の方が喋るのが下手。
 次があり且つ予算に恵まれればホラー映画の『処刑山』→『処刑山2』のような大幅進化もあり得るのではと(私に)思わせてくれた本作。カンフー映画ファンの方は恐らく楽しめると思うのでよろしくドウゾ☆