幽斎

ウォッチング・ユーの幽斎のレビュー・感想・評価

ウォッチング・ユー(2018年製作の映画)
3.6
本作は劇場映画では無く、テレビ・ムービー。アメリカのペーパービュー局「Lifetime」製作。ウォルト・ディズニーと雑誌「コスモポリタン」が運営。北米で9400万世帯が視聴する中堅企業だが独自に映画を製作する事で知られる。Lifetime放送時のタイトルは「WATCHING OVER YOU」で、原題「The Neighborhood Watch」国際版のタイトル。ネイバーフッド、直訳すると「ご近所」だが、本作では別の意味も有る。

アメリカで暮らした事が有る方なら分ると思うが、幹線道路を囲む様に住宅地を開発し、学校を中心としてcul-de-sac、クル・ド・サック、袋小路にする事で外部からの侵入を防いで治安を高めるコミュニティ都市をneighborhoodと言う。日本で例えるなら東京の多摩ニュータウン、大阪の千里ニュータウンは、この都市開発を真似て造られた。本作でも「治安の良さ」がスリラーのプロットに活かされる。

Lifetimeの最大の特徴は視聴者を女性に絞って放送、製作も女性が中心と徹底してる。基本的に白人以外を主人公にキャスティングしない。同局のTVムービーは100分が放送枠とされ、本作も87分と時間的にはサクッと観れる。テイストは私の親世代「火曜サスペンス」に近く(多分)、女性中心と言いながら旦那さんもしっかり喰らい付く、それは美女が出るから。

主演Andrea Bogart、プロフィールにJude Law主演「サイド・エフェクト」と有るので、Blu-rayを観たが確かに出演してたが、それ以外だとTVシリーズばかり。美人だしスタイルも良いが、何となく華が無いと言うか1977年生まれにしては演技に奥行きが足りず、ヒロインとしての説得力に欠ける。美人と言ったが日本人ウケするルックスでも無い。娘役のSierra McCormickもイマイチ、逆に義母のBeth Broderickは妙に若い。マイク役Trevor St. Johnは若い頃のMichael Keatonに少しだけ似てるが、彼は「キングダム/見えざる敵」「ボーン・アルティメイタム」端役でも大作に数多く出演。辛うじて彼の存在感で何とかゴールに辿り着ける。

Sam Irvin監督はベテラン中のベテランだが、経歴の割には代表作が無い職業監督。本作と同じ年にAnna Hutchison主演「ザ・マーダー 連続殺人事件」も製作してるが、出来は良くない。スリラーの王道と言えば聞こえは良いが、日本の2時間ドラマと大差ないクオリティには脱力しかない。これが映画では無いペーパービュー局の限界かも。Lifetimeは局の特性から言って、お茶の間で問題無い程度のグロ演出しか出来ない制約が有る。短い時間でサスペンスを完結せねば為らず「スリラーとしての予定調和」の域は出ない。卓球のシーンが本作最大の「謎」だろう"笑"。

出血ゼロの綺麗なサイコ・スリラー。怖くてサスペンスが見れない方。コレは大丈夫です。
幽斎

幽斎