Kapporiya49

カラーパープルのKapporiya49のレビュー・感想・評価

カラーパープル(2023年製作の映画)
2.9
2023年スピルバーグ監督作品『フェイブルマンズ』のタイミングで、まだ観たことがないスピルバーグ作品を観ようと思って1986年の劇映画の方を初めて観た。
こちらはスピルバーグの映画的な話法の上手さは十分に感じられたものの、このお話の奥深い部分には時代や題材ゆえに手が届いていないような気がした。

まず原作小説があり、スピルバーグの劇映画があり、ブロードウェイミュージカル化されたものをまた今になって映画化したというプロセスがあっての本作。

ミュージカル映画となって戻ってきた本作は、正直なところ本作のエグくてツラいところは薄め、メッセージ性が強化された感がある。それゆえに観ていてスピルバーグ版ほどセリーの束縛からの解放のカタルシスは感じられなかった。

しかし、それ以上にカタルシスを与えてくれたのは音楽とダンス!
ゴスペルの高揚感を感じさせる曲も良かったが、ブルースを現代的にダンスミュージックとしてアレンジし、それにクランプ的な激しい振り付けのダンスで魅せてくれるシーンが多く興奮した。

役者陣で印象的だったのはイカツい女ソフィアを演じたダニエル ブルックスさん。
『ピースメイカー』で知った俳優だったけど、本作ではその身体的な存在感と目ヂカラを存分に発揮していて、画面から飛び出てくるかのような存在感だった。

一方、周囲の俳優から浮いている可愛くて若いお嬢さんをやたら映すけどこの俳優さん誰だっけ?と思っていたら、エンドクレジットでガブリエラ ウィルソン a.k.a. H.E.R. と知った。彼女の音楽はちょいちょい聴くし何度かMVも観てたはずだけど、いつもの意識バカ高い系然としたアーティストとしての外見の印象が強すぎて気づかなかった。

男性陣では、本作の裏の主役とも言えるコールマン ドミンゴ。
最初はこの役を演じる彼に違和感があったけど、スピルバーグ版よりも一段深みを持たせたDV夫の許されざる者の悲哀みたいな存在を見事に演じていたと思う。

総じて、映画的な面白さはそれほど感じられはしなかったが、ミュージカルとしては楽しめたという感じ。
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