Breminger

カラーパープルのBremingerのレビュー・感想・評価

カラーパープル(2023年製作の映画)
3.6
スピルバーグ版は未鑑賞で、あらすじも迫害の歴史の一部をクローズアップしてそこにミュージカルを加えた作品なのかなと思いながら鑑賞。

ミュージカルや歌唱のクオリティはとても高く見応えがありました。ただ断片的だなと感じたところが多かったのと、間延びした展開には少し飽きがきてしまい、観終わったあとに物足りなさが残った作品でした。

ミュージカルシーンは文句なしで、壮大に大人数でやるミュージカルはそこまで多くないんですが、教会のシーンでの狭い空間でわっさわっさ踊れや歌えやのシーンがとてもの好みでここが一番胸躍ったかなと思いました。

1900年代初期、男性の方が圧倒的に立場が強く、女性は奴隷のような扱いを受けており、主人公はその象徴かの如く酷い扱いをされていました。
父親からは牛の代わりに売られ、売られた場所では奥さんともいえない雑な扱いをされていたりと、かなり不憫で観ていて辛いものがありました。
ただこの男女の差別的部分は色濃く描かれていたんですが、人種差別的な部分の描き込みはとても薄く、途中突然登場してくる市長が「黒人は私のことが大好きなの」とか抜かして、使用人として勧誘してくるくらいでしか描かれないので、ちょっとアンバランスになっていたなと思いました。

作中で強い女性として描かれるソフィアの姿はとても美しく、男性に尻に敷かれるのでは無く、自分自身に誇りを持って生きる姿が最高でした。彼女が躍動するシーンはミュージカルシーン以上に昂るものがありました。

登場人物の年齢の重ね方の変化はかなり分かりづらく、30年近く時代が進んでいる割には年齢若くね?と思うところもありましたし、風貌が似た人たちがどどーっと押し寄せてきて混乱するところが多々ありました。

ミュージカル自体は素晴らしかったはずなのに、なぜか楽曲がひとつも思い出せないのが観終わった後の謎でした。
作品としてミュージカルでオリジナル元のエグさを中和したのかなとは思いましたが、それが今作の特徴になるはずだった部分を消してしまっていたのかなと思いました。

終盤、終わりそうだなと身構えていたら終わらず、終わりそうだなと思ったらまた終わらずが何度も繰り返されて、焦ったくなってしまいました。セリーが空を見上げたシーンなんか絶対に終わったと思ったんですけどね笑

ラストシーンはあれだけ罵っていた旦那を読んでのパーティーで、妹と娘と息子と再会しての一見ハッピーな終わり方でしたが、あの旦那を本当に許していいのか?と疑問を持つ終わりだったので少しモヤっとしてしまいました。

良い映画だったなと思うところは多くありつつも、ミュージカルを交えたからかなのか、どこかテーマがぼやけてしまっていたなと思いました。それにしても長く感じてしまったのが惜しいばかりです。
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