がちゃん

帝銀事件 死刑囚のがちゃんのレビュー・感想・評価

帝銀事件 死刑囚(1964年製作の映画)
3.8
未だに冤罪説が色濃い『帝銀事件』。
1948年1月に、閉店直後の帝国銀行椎名町支店に東京都防疫班の白腕章をつけた中年男性が、行員ら16人に毒物を飲ませ11人を殺めて約16万円を強奪した事件です。

謎の多いこの事件を、
徹底した調査と取材で社会派熊井啓監督が映画化。
セミドキュメンタリーながら、下手なサスペンスミステリーよりも胸に迫るものがあります。

事件の容疑者として捕らえられたのは、
画家の平沢貞通という男。

かろうじて生き延びた被害者との面通しでは、
背格好は犯人と似ているが、
顔は似ていないという証言が多かった。

しかし検察側は、警察の拷問に近い取り調べによる自白(のちに平沢は撤回するが)を重視して、極刑を求める。

事件の推移を取材している新聞記者らは、犯行に使われた薬品が、旧日本軍731部隊が開発していたものではないかと調査を進める。

その薬品の取り扱いは、一部の軍関係者しか知らないことであり、画家の平沢がそこまで薬物に精通していないことまで突き止めるが、
当時、米軍の占領下にあったため、情報の漏洩を恐れたGHQが圧力をかけてきて、軍部関係の捜査は打ち切られる。

獄中で無罪を叫び続ける平沢だったが・・・

この作品の見立て通りの事実が進んでいたとしたら、
とても恐ろしいことです。
一市民が政府の陰謀に巻き込まれて消されてしまうのですから。

平沢に対する調書も、
まるで作文のように作り上げられていきます。
密室ですから、
何をやっても外部には漏れない。

あまりにも有名な事件なのでネタバレしますが、
平沢は死刑を宣告されます。

身柄を仙台拘置所に移されますが、結局歴代の法務大臣は死刑の書類に署名をせず、平沢は1987年に獄中で病死しています。

もちろん、
1964年制作の作品ですから、
この結末は描くことができなかったですが、その40年以上にわたる獄中生活は壮絶なものであったろうと推察されます。

一体、
真犯人は誰なんだ、どうなったんだ!とモヤモヤしたものがずっと心の中に残ります。
未見の方は一度ご鑑賞ください・・・


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