Kawaguchi

漁港の肉子ちゃんのKawaguchiのレビュー・感想・評価

漁港の肉子ちゃん(2021年製作の映画)
4.0
主人公キクコにとって、肉子ちゃんは所謂『 キャッチャー・イン・ザ・ライ 』です。

サリンジャーのキャッチャー・イン・ザ・ライ(ライ麦畑でつかまえて)は、世の中が信じられない17歳の主人公ホールデンが、ガールフレンドや妹と接しながら、自分がなりたいのは、ライ麦畑で遊んでいる子どもたちが、崖から落ちそうになったときに捕まえてあげる、ライ麦畑のキャッチャーのようなものだと決心する物語でした。

アニメーションながら、本作のテーマひとつは『貧困』です。貧困の中で、人はどのような選択をしてしまうのか、ある人は犯罪に手を染め、ある人はドラッグに溺れ、ヤクザや風俗などに落ちてってしまいます。それは我々の身近に存在し、こちらを見つめています。

そんなぎりぎりの崖を、 社会的に弱い存在が受ける痛みを、 ユーモアと笑いで肉子ちゃんがいつもいつも救い上げ(キャッチ)ていく物語です。
そして、 小学生女子が自意識や恋の芽生え、そして生理を通して、人間に成長していくお話です。 泣いてしまう場面でも、必ずユーモアをとり入れ、一貫して観客を泣かせようとするだけの姿勢を見せないのも素晴らしかったです。

テーマ自体は子供向けではないですが、動きのあるポップでキャッチーなアニメーションが補完していて、どの世代がみても楽しめる作品になっていると思います。高畑勲の『じゃりン子チエ』『おもいでぽろぽろ』の系譜を正々堂々と受け継ぐ、見て損はない1本だと思いました。
Kawaguchi

Kawaguchi