藻類デスモデスムス属

三月のライオン デジタル・リマスター版の藻類デスモデスムス属のレビュー・感想・評価

4.5
  

  クロロフルオロ

冷凍庫の中から出てきたアイスは1992年のものだった。昨日買ったアイスと並べてみても、なにが違うか分からない。それは同じくらい新しく、わたしたいのは桜いろの、うんと冷えた熱なのだ。口に含むと、舌にひっつくような、ちょっと攻撃的なありかたをしたそれは、太古からあるものなのに、古くなるなら消えてしまおう、なんて言うかのようにそれは

問題はどうしたらわたせるだろうか、ということだった。途中で消えてしまう前に。生まれ方も忘れてしまうほど、いまはこんなに暑いのに

極めて安定で成層圏まで到達し紫外線に分解されクロロを放つ。クロロはオゾン層を破壊して空いた穴から紫外線が降り注ぐ。規制され回収して破壊する。クロロを減らしたハイドロクロロフルオロカーボンは少しましだった。でも規制され回収して破壊する。名前に、番号をつけた。右からフルオロの数、ハイドロの数プラス1、カーボンの数マイナス1

CFC 11 全廃
CFC 12 全廃
CFC113 全廃
HCFC 22 全廃
HCFC123 全廃

「愛が動機なら
やってはいけないことなんて
なにひとつ、ない」

オゾン層の破壊
紫外線による健康影響
温室効果による地球温暖化

傷つけないものとしてあるには、膜はすこしやわらかすぎて、バランスはあまりに微妙だった

ウィーン条約1985採択
モントリオール議定書1987採択
ふりかえると世界中が首を横にふっていたがしかし

「アイスいる?」
(うん)


いっそ閉じこめてしまおう、何度思ったかしれない。悲しいニュースの後の明るい声が素通りしたのは、日のあたる病室だ。カーテンが揺れ、笑うと汗が落ちた。時刻は十一時で、空は高かった。どこまでも閉じ、どこまでもオープンなのだった。きっとあったのだろう、昔から。ずっと降っていたのだろうそれは。ラジオがひとりでしゃべっていた。きっと誰かがまた、わたそうとしたので、光の加減でみえるのだという、それは三月に