ずどこんちょ

地獄の花園のずどこんちょのレビュー・感想・評価

地獄の花園(2021年製作の映画)
3.3
バカリズム脚本のぶっ飛び設定コメディ。
普通の会社で働くOLたちが、喧嘩で覇権を争うヤンキーだったらというユニークな世界観です。男たちは普通の会社員で、あくまでOLだけがヤンキーなんですよね。
コピー取ってる会社員たちの裏で、ライバル会社からカチコミ来たぞと走り出すヤンキーOLたち。面白いです。

しかし、主人公の田中直子はいたって普通のOLで、ヤンキーOLの覇権争いには興味を示さず、普通OL仲間と一緒にランチをするような主人公なのです。
そこに現れたのがヤンキー漫画の主人公のようなOL、北条蘭。蘭は弱い者のために力を振るうヒーロー的なヤンキーで、その強さからあっという間に社内のトップに君臨してしまいます。
ところが、蘭が強いと言う名が世間に知られれば、その分、他社からの挑発も増えてくるもので。次第に、直子もその喧騒に巻き込まれてしまいます。
平凡なOLでありたかった直子が、ついにその本性を露わにするのです。

エンケンさんや勝村さんらが地声でヤンキーOL演じてるシュールさもさることながら、地上最強のOL・鬼丸麗奈を演じた小池栄子のラスボス感がすごい。そこにいるだけで圧を感じるし、バトルも力強いです。破壊的です。

本作の主人公は「守られる立場」だった直子だと思うのですが、ヤンキー漫画のかっこいい主人公のようだったのは蘭でした。
面白いことに、蘭もそれをバリバリ意識していました。ところが、直子が実は本性を隠していたことが判明し、蘭は主人公としてのアイデンティティを喪失してしまいます。
本当に主人公だったのはやはり直子でした。脇役が主人公を気取っていた寒さに気付いてしまうわけです。

なのに、敗れた蘭が血の滲むような特訓を経て、再び史上最強になるために戻ってきます。その瞬間、主人公だった直子は、今度は蘭にとっての"ラスボス"になるのです。

ストーリーはあくまでくだらないのですが、この構造が面白かったです。
ヤンキー漫画のような世界観をキャラクター自身が意識しながら、同時に主人公のポジションをめぐる熾烈なバトル。誰が輝かしい"主人公"という覇権を取るのか。
バカリズム脚本は他のコメディ作品にはない設定の世界観で面白いです。