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なんのちゃんの第二次世界大戦のradioradio526のレビュー・感想・評価

3.0
「あの人の言う平和は嘘なんだ」

「なんのちゃんの第二次世界大戦」鑑賞。

外来種である亀の大量繁殖問題に悩まされる関谷市。そんな関谷市の市長・清水昭雄は太平洋戦争の平和記念館設立を目指していた。そこに1通の怪文書が届く。
「平和記念館設立に反対する。私は清水正一を許さない」
送りつけてきたのは、街で石材屋を営むBC級戦犯遺族の南野和子。
そこから始まる市長VS南野家の攻防戦。
思想とは無縁のスナックママの長女、国際ボランティア活動をしている孫の紗江、もう一人の孫で石材屋を手伝う光、紗江の娘の幼子マリ。
思想もバラバラの南野家がそれぞれの思惑で昭雄にぶつかっていく。
被害者と加害者の境もなくなり、思いもかけない奇想天外なラストへ。

平成生まれの新鋭監督・河合健が撮る戦争映画。上映後に監督の舞台挨拶があった。
「戦争って色んな人に聞けば聞くほど、わけが分からなくなってしまった。その混沌を作品で表現してみた」と仰っていた。
全編が淡路島でのロケ、そして演者のほとんどが地元の素人さんという低予算丸出しの作品ながら、子役・マリを演じた西めぐみの神がかり的な演技で絶妙なブラックコメディーに仕上がっている。

吹越満という役者が好きだ。名バイプレイヤーと言われることも多いがそんなことより、役者としての稀有性があると思っている。
憎み切れない小悪党とでも言うべきか…本当のワルになり切れないと言うべきか。
アメリカ映画とかにはわりと居るんだけど、日本はここらへんを絶妙に演じられる役者さんは少ない。実は人情深くて、そのくせズルいことにも手を染めるようなどこか…人間臭い感じがする。
メインキャストが彼であることは即ち「観たい」のだ。

監督のトークで知る吹越満さんは「低予算なんだからこうして楽しまないと…」とガンガン現場の演技指導を仕切っていたらしい。
最初は怖い人なのかと思っていた河合監督は「まるで監督が二人いるみたい・笑」と感謝しておられた。
うん…正しいローカル映画の形だなぁ…と思う。
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