まや

戦場のメリークリスマス 4K 修復版のまやのレビュー・感想・評価

4.7
青みがかかった画面に赤いタイトルが映え、聴き取りにくかったビートたけし氏とトムコンティ氏の日本語がはっきり聴こえ、坂本龍一氏の音楽の低音部がちゃんと響き、修復版の良さを実感。
日本の武士道精神と全体主義、所謂「恥の文化」にキリスト教的共苦や赦しが対置して描かれる。が、その赦しは決してアガペーのみに因るものではなくそこに性愛/恋愛を含めないと成立し得ない。ホモフォビアと認識するのも難儀であろうヨノイ大尉の潜在的な自己嫌悪が彼に刀を振らせるが、英国軍人セリアズは彼の刀を阻止し、彼を愛することで同じ傷を負って彼のフォビアを解き、彼を赦すために死を選ぶ。これは反戦とアガペーという表層を纏った崇高な恋愛物語だ。
棒読みの台詞も唐突に感じる回想場面もキスシーンのカメラのブレも計算されているようでされていないようでされているような、あまりにも不完全であまりにも美しい作品。
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