眠人

愛のコリーダ 修復版の眠人のネタバレレビュー・内容・結末

愛のコリーダ 修復版(1976年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

公開当時、生々しい性描写が話題になった作品。監督は巨匠大島渚。かの有名な阿部定事件が題材となっている。本当は性器にボカシが入っていない無修正版を観たかったけれど、U-NEXTで配信されているはずがなく、やむなくボカシのある修復版を視聴した。

時代は昭和初期。料亭の女中である阿部定(松田瑛子)が料亭の主人で妻帯者の吉蔵(藤竜也)と不倫関係に陥る。愛欲に溺れる二人。この二人、劇中でとにかくセックスしまくる。散らかった部屋も片付けずに明けても暮れてもセックス三昧。定の女性器に挿れた食べ物を吉蔵が食べる、二人のセックスを芸者に見せつける、吉蔵と芸者のセックスを定が眺める、セックスしながら首を締め合う等、プレイの内容もバリエーションに富んでいた。依存関係の極限に陥った二人。首絞めセックスがエスカレートしていく。とうとう定は吉蔵を絞殺し、吉蔵の性器と陰嚢を包丁で切り取ってしまう。正直、ここまでの性描写がある映画を観たことが無かったので面食らってしまった。
本当に生々しい描写が続くけど、官能さはあまり感じなかった。艶やかな着物や絶えず鳴り響く三味線の音が繊細で美しかった。

自宅を出奔してセックス三昧の吉蔵が、中国に出征する軍人の隊列とすれ違うシーンがとても印象に残った。吉蔵は頭を下げ、軍人たちとは全く視線を合わせない。自分と同年代の男たちは戦地に赴くのに、自分は愛人と愛欲に耽っている。そのことに吉蔵はどこか後ろめたさを感じつつも、泥沼に進んでいく戦争にも嫌気が刺していたのではないだろうか。それが吉蔵の刹那的な放蕩生活や破滅願望にも繋がっているのかもしれない。声高に反戦の声を上げられない時代、吉蔵のささやかな抵抗は性生活に溺れることだったのだろうかと感じた。
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