無差別イイネは咒殺

愛のコリーダ 修復版の無差別イイネは咒殺のレビュー・感想・評価

愛のコリーダ 修復版(1976年製作の映画)
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シネマリンで愛のコリーダ。
モザイクをかけ続けられる限り政治的主張になるという発想も凄いが、ここまで延々と性行為を見せつけられると地獄。
食毛(誤字でない)等、生理的にシンドい生々しすぎる性描写が続くと、我々人間もあくまで獣にすぎないのだと否が応でも観客に突きつけられる。傑作。

吉さんは死にたかったのかな?
あまりに性行為しかない内容なので、それ以外のシーンが逆に印象に残る。
散髪後、出征する兵士を見送る民衆を尻目に、心ここに在らずで歩く姿が印象的だった。
労働、家族としての役割からも解脱し、人間的な社会性をどんどん失っていく。
果ては食欲すら失っていく。

強い刺激を求めて遂には死んでしまうというのは、自由の象徴としての性にも見えるし、同時に性という悪魔に取り憑かれた人にも見える。
過激さを増す阿部定になすがままで人間性を失い命を捧げる姿は、戦時中の市民のようにも思える。
とにかく、性に溺れる姿は、自由というより恐ろしく見えた。