夜ノ砂

かぐや様は告らせたい ~天才たちの恋愛頭脳戦~ ファイナルの夜ノ砂のレビュー・感想・評価

3.5
コミカルキャラのギャグも物語のアクセントにとどめていて無理がないし、白銀(平野紫耀)とかぐや(橋本環奈)の頭脳使いすぎな恋愛駆け引きもストーリーにうまく溶け込んでいて、作品全体を貫くラブストーリー最後の一捻りにもなっている。

「チンチン」、「乳繰り」、「下手すぎて卒倒」…初っ端から下ネタが繰り出されるが、中盤は体育祭を舞台に石上優(佐野勇斗)の過去にまつわるエピソード、後半は文化祭と進路の選定といったイベントで学園内の人間模様や白銀御行と四宮かぐやのやり取りをクールなセリフ回しでちょっぴり哀愁漂う雰囲気に描いている。

ラストはいいカタルシス。身体から温もりが伝わってきそうで胸熱ならぬ胸温。

橋本環奈。前作は決して下手ではないんだけどどこか漫画寄せ=作られた感があった。最初なのでキャラ再現(ビジュアル、所作、喋り方)に重きが置かれるのは当然の要請ではある。

そうした“ある種の物真似”から現実キャラとして独り立ちさせるには映画1本では時間が足りないし、おそらく当時の環奈にはやや力不足だったと思う。

しかし、環奈によって命が吹き込まれた3次元かぐやは、本作で見事完成をみた。もはや四宮かぐやは再現された漫画キャラではなく、「現実世界にいるちょっと変わった女の子」に昇華したのだ。

だから、「白銀が好きだけど素直になれない頭脳明晰なお金持ちの副会長かぐや」がとてもいじらしく思えてならない。

一方で、白銀の父(高嶋政宏)が白ブリーフ一丁でカメラ担いで「全裸監督」…といった受け狙いが少々鼻につく。演出側のセンスのなさは健在。

とはいえ、演技、演出ともに変な気負いがなく自然体。画的にも基本的にトーンが統一されている。わかりやすい山場がなく、初見の人には予習が必要になる点はあるもののバランスの良い出来。
夜ノ砂

夜ノ砂