すきま

ボストン市庁舎のすきまのレビュー・感想・評価

ボストン市庁舎(2020年製作の映画)
-
行政の場で話し合いが奨励されることは素晴らしい。日本でもこのような取り組みは必要に思う。
ただ、ここには激しい討論は収録されていないけれど、実際に行えばもっと険悪で話し合いにならないような場合もあるのではないか。
ここに出て来る人は皆、理路整然と話していて、一様に説得力がある。字幕を見ながら英語を聴いていると、一瞬リスニング力が向上したのではと錯覚するくらい。
けれど、説得力を持って理路整然と間違った話をするのも可能である危険性と、実際に困りごとを抱えている当事者の多くは、状況を整然と話すことは難しいので、一番力を入れる必要があるのは聞き取りであるだろう、ということが、この映画では詳細には表現されていないと思った。
差別や威嚇行動を行ってしまう側の人もまた、違和感や欲求の言語化が苦手であり、また辛抱強く話を受け取られる機会の不足が根本にあると思われる。そこを暴力になる前に汲み取ることも必要なのだろう、と退役軍人にまつわるエピソードを見ながら感じた。
沖縄戦に参戦した退役軍人が敵兵の金歯を持ち帰ったとの話は、日本人なのでぞわっと一瞬強い抵抗を抱いたけれど、続きを聴いた感じでは、同じ場所で生死を掛けなければならなかった相手への共感からの行動だったのだろう。
辛い経験を共感しあう生きている人間が周りにいない苦しみ、それは、市長が言っていたように、依存症や被災や事件による被害や、色んなものに共通している。
自分では他人と苦しみを分け合えるようには感じられない、だから周りが自助会へ行けるようにお膳立てすべきなのだろう。
すきま

すきま