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オートクチュールのakiyoshiのレビュー・感想・評価

オートクチュール(2021年製作の映画)
4.0
移民が主役、サブキャラのドラァグクイーン(かな?)など、とても現代的なフランス版・光の側面の「プラダを着た悪魔」。「ディオールを着た悪魔」かな。エステルは悪魔というには人間味にあふれ、情に厚く、後悔と病気、弱みも描かれています。あと職場の人たちのエステルへの態度も、少数のひとを除いてはとても暖かく善良です。主人公の彼氏役も、一緒に仕事をがんばれる男性。
ミドルライフクライシスに直面する中年女性と、若い移民の女性の、母と子のようであり、師匠と弟子であり、他人同士etcである奇妙な関係と服飾の仕事を描きます。ジャドはとても今風の女の子で、昔の職人気質のエステル(技術の継承やファッションへの信念は素晴らしいのですが、ブラック企業・パワハラ的側面もあります)に対し、移民差別・家族の介護など厳しい環境にさらされていることもあってきちんと労働に対する対価や休日を求めます。
ジャドの友人は人種差別が強く、アジア系を「スシ」と呼んだりアラブ系と付き合うと呪われるとか、この作品ではルーツによる差別・人種差別をはっきり否定していますが、きつい表現があります。あと、あきらかに重いうつ病を患っているジャドの母親に対する、ジャドによる「頭がおかしいだけ」とかいう罵倒から立ち直りの経緯が単純すぎて、精神障害者への偏見を広めないか心配です。あんなふうなケンカは、たいていの場合うつ病を悪化させます。家族との共依存関係の解消、ケアがさらりとを描写していましたが、専門家によるケアもふくめてもっと丁寧にえがくべきでは。
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