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茲山魚譜 チャサンオボのあんずのレビュー・感想・評価

茲山魚譜 チャサンオボ(2019年製作の映画)
4.1
19世紀の韓国、キリスト教迫害のために島流しにされたチョン・ヤクチョンにまつわる伝記映画。チョン・ヤクチンを演じるのは『oasis』などで知られる名優ソル・ギャングなのだが、言われなければ分からなかった。モノクロでのんびりした雰囲気も漂うが、支配階級による庶民への搾取はとんでもなく酷い時代だ。いつの時代もどの国でも権力者って……

天才学者のチョンも魚については素人で、村一番の漁夫チャンデを師として、海洋生物学書を庶民のために作ろうと奮闘する。交換条件として、チャンデには身分の高いエリートたちが学んでいた学問を教える。チャンデは漁夫ではなく、両班という支配階級に憧れていた。次第に打ち解け、年齢を超えて師弟関係や友情を育む姿は、『メタモルフォーゼの縁側』を思い出し、観ていて気持ちが良い。でも、それだけでは終わらず、後半はやや辛い展開にもなる。

学問を学ぶのに遅い早いはなく、いくつになっても好奇心旺盛ということは素晴らしいし、生きる意欲にも繋がる。何を学んでも無駄ではないと思うけれど、何のために学び、それを何に生かすのかということは、結局その人が人としてどう生きるのかということにも繋がるんだと教えてくれる。誰しもが自分の学びが誰かの役に立った時、すごく嬉しいものだと思う。このフィルマでも皆さんのレビューから、映画や人生について学んでいる気がします。感謝です。
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