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AK vs AKのkissenger800のレビュー・感想・評価

AK vs AK(2020年製作の映画)
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最近見て面白かった映画あります? って会話でケビン・スペイシーが最初に世に出た作品の名前を挙げたときのことを覚えています(=老人はちょっと目を離した隙に昔ばなしをする。という典型に自分がなって感慨深い)。
バイト面接で採用した若者が別部署に異動して社員になったぐらいのタイミングで、つまり対等の話し相手というより遠慮がちに話されるなー、ぐらいの距離感での会話だったのですが、なにしろ先方はゴリゴリの映画ファンだから「あーあれ、面白かったですよね」と認めたうえでいわく「でもあれはフェアじゃないんです、私からすれば」。
宗教上の信念を語るかのごとき、おごそかな口調に、お、おう。って盛り上がったのがもう20数年前か、他のあらゆる美点を認めたうえで、ただ一点の瑕疵によって残念。
って評価に至ることもある。ってこの話、まあまあの頻度で思い出すんですよ。
……という前段に続けて言うんですけど、99ぐらいまで何これすっげー面白い。ってなってたのが残り1で「あー」、っていう久しぶりの体験でした『AK vs AK』。
チャーミングなことは請け合えるし、自他ともに認める大スターが「踊れー」って声がかかるとほぼ反射的に踊ってしまうシーンの侘びサビ風味も得難いし、好きな部類の作品なんです。でもねえ、残り1の詰めが惜しいんだよなー。これぞ「九仞の功を一簣に虧く」ってやつ。
たぶんみんなが連想するのは数年前のスマッシュヒット邦画なんですが、あれがいかに良くできてたかっていう……ええと、なんですかね、この「残り1の詰めの甘さ」の正体(書きながら考えている)。

プロットを映画の登場人物より先に観客が知らされている、という神視点による娯楽がまず供給され、製作者によって最後に「×××」って言われる、簡単にまとめるとそういう物語なんですけど(これはネタバレではあるまい)神たる俺にそれを言うならもっとちゃんとしろ。って不満。
神視点の観客は、神に見下ろされていた下界の者共、すなわち出演者を含めた「そこまでの映画のすべてに等しい」わけで、そこに語るなら、その重みに見合うだけのメッセージである必要があるのに、そうなっていない。
……ぐらいかなあ。いやあ、なんて説明面倒くさい作品なんだ(まあまあ機嫌の良いときの顔で)。
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