幽斎

ロックダウンの幽斎のレビュー・感想・評価

ロックダウン(2021年製作の映画)
3.0
Anne HathawayとChiwetel Ejioforは、COVID-19パンデミックでロックダウンのロンドンに住むカップル。2人が別れる決心したのと時を同じくして、300万ポンドのダイヤを盗み出す計画が浮上する。果たして、高級ダイヤモンドの行方は?。

Steven Knight、脚本、イギリス人。元は売れない小説家だが、運よく長編映画デビュー作「堕天使のパスポート」オスカー脚本賞にノミニーされた。だが最近はスランプ気味でレビュー済「蜘蛛の巣を払う女」は監督と喧嘩。前作「セレニティー 平穏の海」は酷評。彼は閃きで書ける天賦の才が有る(イースタン・プロミスは傑作)反面、時間に急かされるビジネス脚本には弱い。

Doug Liman、監督、アメリカ人。「ボーン」シリーズを成功に導いた事で知られるが、それは眉唾で、ボーンのオリジナルの名優Richard Chamberlain主演1988年「スナイパー/狙撃者」を完コピしただけで、受け継いだPaul Greengrass監督の功績が大との認識が強い。監督はしっかりした脚本が無いと駄目な人で、ハリウッド的には職人扱い。

時は2020年7月。監督のオフィスでZOOM会議、アメリカのTVショーを再現。

Doug(以下D) やあSteven、最近調子どう?
Steven(以下S) どうもなにも、ロンドンはロックダウンで最悪だよ
D だよな、ハリウッドも開店休業でワクチン接種もこれからだし
S こっちも「Spencer」(ダイアナ妃の映画)を書き上げてから暇で困っちゃったよ
D でも出来が良いって評判じゃないか、こっちの新作「Chaos Walking」はイマイチで
S 何言ってんだよ、新作が何本も待機してるって聞いたぜ
D バレたか、ところで今のロックダウンが昔話に成った時に
S そんな日、すぐ来る訳がない
D いや、だとしてさ。この時期にロケをやるのはどう思う
S 無理無理、カナダでロケするだけでも大変なのに 気は確かか
D だって今ならスター俳優も暇でギャラも安く出来るし、逆にチャンスかも
S そうは言っても撮影が出来なきゃダメじゃないか
D いや、実はおたくのハロッズが休業してる時にロケをやるのは
S まてまて、老舗ハロッズでロケなんて聞いた事がないぞ
D 馬鹿だなぁ、もう交渉はしたよ 演出に制限付きでOKらしい
S そりゃ凄い、でもデパートの中で恋愛話でもするつもりかよ
D だから、そこはイギリスお得意のクライム系で泥棒話でも付け足して
S 簡単に言うなよ、そんなの絶対に脚本が中折れするに決まってる
D そこを何とかするのがお前さんの仕事だよ、オチは何でもいいんだよ
S でもそれじゃあ、よほどキャストが良くないと客はこないぜ
D だから、主演はAnne Hathaway!「The Witches」が空けたし
S そりゃ、お手柄だ だったら相手役はイギリス側で揃えるよ
D 宜しく頼む、でもハロッズは7日しかロケ出来ないから
S 話が上手すぎるな、ハロッズ以外はセットで撮影?美術はどうするんだ
D ハウススタジオを一棟貸し切りで、その敷地内で撮影すれば問題ない
S 待てよ、エキストラはどうするんだよCOVIDで集まらないだろ
D すでにハロッズの従業員に出てもらう契約を進めてるよ
S なるほど、でも今から書き下ろすとなると、出来上がりは10月ぐらいかな
D 悪いけど撮影は9月から始めるから、それまでに じゃあロンドンで会おう
S 無茶言うなよ、そんなの絶対無理だよ おい!オフラインじゃないか!

まぁ、こんな感じの作品です(笑)。

原題「Locked Down」造語、正しくは「lockdown」。一番の問題点は武漢ウイルスで疲弊してる日常を、娯楽の映画でも観たいか?と言う視点の欠如。こんな時こそ、私の嫌いな(オチが直ぐ分る)ディズニーの出番。英国得意のコンゲームを担ぎ出しても、底が浅いので面白くない。コロナ禍を中途半端に描けば、残るのは嫌悪感。日本人ならマスクの着用率に唖然とするだろう。Anneで言えば同じ「オーシャンズ8」メンバーMindy Kalingが出演してるのも逆効果。

プロットの三要素①ロックダウン、②宝石泥棒、③夫婦の物語が乖離して、作品としてのシナジー効果も感じられない。尺を90分に短縮すれば、もっとマシな作品に成るのだが、其処はヘボ監督でナッシング。Anneのファンは日頃見れない彼女の姿に、対価を払えるか?で決まるかも。

スリラー派としてはEdgar Allan Poeを知らない時点でロックダウンよりも戦慄を覚えましたね。
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