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ザ・ユナイテッド・ステイツvs.ビリー・ホリデイのchunkymonkeyのレビュー・感想・評価

3.0
伝説のジャズ歌手ビリー・ホリデイの伝記映画。タイトルからも想像されるように単に彼女の生涯をなぞるだけでなく、いわゆる構造的な人種問題に翻弄される黒人の人生を主題に据えています。

人種差別を扱った映画は近年数多く公開されていますが、やはり多くの人が知るビリー・ホリデイという人物の人生を通すことで、なぜアメリカにおける黒人の人種問題が差別「意識」とは別次元の深刻さを持つ「構造的」なものと言われるのか、なぜ人種差別問題でなくBLMなのか、より切実でクリアカットに理解されます。

が、この映画の致命的な問題は肝心のビリー・ホリデイが全く魅力的な人間に描かれていないところです。いや、映画のプロットをみて事実だけ拾えば社会に翻弄されながらも力強く生きる非常にカッコいい人なのに、なぜか映画ではそう見えない。信念を通すというよりなんだかただ態度が悪くてわがままな人にみえてしまう。また、映画内でのデジャブが非常に多く、ストーリーは進んでいるはずなのに彼女の人生の来歴がピンと来ない。残念な脚本です。

伝記の基本はやっぱりその人物に対する敬意なんだなと思いました。ゴールデングローブで主演女優賞受賞、アカデミー賞にもノミネートされたアンドラ・レイは本業が歌手とのことでさすがに音楽はよかったです。
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