しろくま

にしきたショパンのしろくまのレビュー・感想・評価

にしきたショパン(2020年製作の映画)
3.3
《めっちゃ練習したら芸大受かるかな?》
〝うん〟〝先生みたいにショパン弾けるようになるかな?〟〝なれる。先生も言っていたやん。面壁九年って〟〝何語なん?あれ〟〝達磨大師が9年壁に向かって座禅して…〟

長年座禅をして悟りを開いた達磨大師のように、一つのことを長いこと頑張れば報われるっていう教えを先生が伝えようとしていたってことを凛子に説明してる鍵太郎くんって、かなりの物知りちゃん。

ロケに使われていた〝おでんでん〟のマスターが先生役をやっていた泉高弘さんで、ふくよかな体型はホントに達磨みたいだけど実は凄いピアニストのお方。京都市立芸術大学を卒業、兵庫県立西宮高校でも講師としてピアニストを育ててこられた。その後やりたかったバーのマスターに。マスターの流麗な演奏を聴きながら、オリジナルの美味しいおでんを堪能できる素敵なお店なんだって。

ヒロインの凛子を演じた水田汐音は、ベートーヴェン国際ピアノコンクール in ASIAで第1位となるなど、数々の受賞歴がある音楽家さん。ピアノの演奏はもちろん凄いし、演技もめちゃめちゃ自然で、引き込まれるね。

本作は、ピアニストを目指す幼なじみの高校生、鍵太郎と凛子の互いをライバル視しながらも一緒に練習をする二人の淡い恋模様が描かれている青春映画だと思って観ていたら…。

途中、地震で鍵太郎が怪我を負ったことから、思いもしないような展開に。めちゃめちゃ愛憎劇やん。鍵太郎がなにを考えているのか分からないし、そこまでして鍵太郎に従う凛子も信じられず…。それでも、あの選曲や練習には一発逆転の何か秘策があるんだとばかり思っていたら…。作品概要には、〝局所性ジストニアなどのために左手だけでピアノを演奏する「左手のピアニスト」を応援することをテーマ製作されたヒューマンドラマ〟って紹介をしているのだけど、何かぴんと来ない展開。

それに、本作のタイトル〝にしきたショパン〟の〝にしきた〟って、阪急電鉄の西宮北口駅のことで、あの地震は、阪神淡路大震災。作品概要には〝阪神淡路大震災の記憶を語り継ぎ…〟って書かれているけど、映画では、震災のシーンはわずか数秒だから気づいている人は少なかったんじゃないかな。西宮北口駅近くの〝おでんでん〟の他にもロケ地に西宮周辺が使われているのに、西宮を盛り上げるための地域映画っていう感じがしないのももったいないね。

視聴メモ:2023.12.31/195/Abematv
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