マーくんパパ

異邦人 デジタル復元版のマーくんパパのレビュー・感想・評価

異邦人 デジタル復元版(1967年製作の映画)
4.0
(再)むか〜しTV放映で観た以来、カミュ–の不条理小説をヴィスコンティがマストロヤンニ主演で映画化。シャツも不快に絶えず汗ばむアルジェリアの暑い気候、養老院暮らしの母が亡くなった知らせを受けたムルソー(マストロヤンニ)、母への深い愛情もなく葬儀に立ち会うも棺を開けて母の遺骸との対面も拒み、葬儀中も時間持て余してタバコ吸ったり参会者にはつれない態度で一刻も早く立ち去りたい気分ありあり、そんな様子をアラブの参列者は苦々しく見ている。翌日には同僚のマリー(A・カリーナ)連れて映画見て海水浴にはしゃいだりと母の喪にも服さず日常生活に戻るムルソー。そんな彼がふとした弾み(太陽が眩しくてつい…)で人を殺めてしまい現地で裁判となる中で普段の行状が次々と証言されて情状酌量の余地なく死刑が宣告される。ここで“異邦人”の意味合いわかって来る。社会の規範を弁え神を信じて生活する「規制人」の対義語として自己中心で他人の目を気にせず振る舞うために「他者からは排除したい人間」に括られる。排除の論理が優先され本質議論の余地なく審理が進む恐怖が克明に描かれる。そして神も信じず、いずれ人間誰しも産まれて来たからには1人で何処かで死を迎えるんだと叫んで死刑台に登るムルソー。反面、どんなに不条理でも“生きて死す”は生き物の条理である事を思い知らされる哲学的な問いでもありました。