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国民の選択のDickのネタバレレビュー・内容・結末

国民の選択(2021年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

●作品概要(公式サイト):
我が国観測史上最大の被害をもたらした東日本大震災を原因とする福島第一原子力発電所の事故から今年の3月でちょうど10年。日本国内はもちろん、世界でも最悪レベルの原発事故にも関わらず、今なお日本では原子力発電所の再稼働を試みる動きがある。あの悲劇が繰り返されないために自分達で学び、考え、発言していく足がかりになるべく、なぜ日本に多くの原発が出来たのか、日本の原発の歴史、原発の構造などを伝えることをテーマに本作品が企画された。この難しいテーマに挑んだのは、日本大学芸術学部映画学科講師を務めながら、2014年に自身の体験をもとに共依存をテーマとした映画『共に歩く』で長編映画劇場デビュー後、2016年には「戦争放棄」「戦力不保持」「交戦権の否認」などの憲法9条をテーマにした映画『第九条』が話題となり、今なお各地の劇場で上映されている社会派監督、宮本正樹がメガホンをとった。キャストには、主演にテレビ朝日「魔進戦隊キラメイジャー」(20)のキラメイブルー役で注目を集める若手俳優、水石亜飛夢。テレビ朝日系「超人機メタルダー」(87)の主人公である剣流星(メタルダー)役で知られ、今では舞台を中心に活躍している、妹尾青洸。日本テレビドラマ「俺のスカート、どこ行った」(19)やAbemaTV「オオカミくんには騙されない」(20)にも出演し、話題となった若手女優、松永有紗らが出演、他にも主に舞台で活躍する個性派俳優のみょんふぁ、南圭介が脇を固める。

❶相性:良好。

➋舞台は20XX年、近未来の日本の、とある原発の町。
①国会で原発に反対する議員たちから原発を禁止する憲法案が発議され、国会議員三分の二以上の賛成により、「国民投票」の実施が決定した。
★凄い。夢のような話だ。
②原発警備員として働いている主人公・高橋敦の一家は、引退した祖父、有力町会議員の父、母、そして大学生の妹の5人家族。
③父は、家族会議を開き、原発賛成に投票するように指示する。この町は原発に依存しないと生きていけないのだ。この時の家族の立場は賛成4、保留1:祖父は容認(賛成)、父母と敦は賛成、妹は状況を知らないのでこれから調べると保留。
④妹は、親しい同級生に相談し、先輩に教えを乞う。その結果、電力会社と政府の言っていることは事実と異なることを知る。
⑤敦は、婚約者から妊娠したことを告げられる。婚約者は、生まれてくる子の為にも、反対して欲しいと頼む。
⑥町で「再生可能エネルギーの有効利用を考える会」が開かれ、母は敦を誘って参加する。そこで、発電には原子力以外に、石炭・石油・天然ガス・風力・太陽光・地熱・バイオマス等々、色んな方法があり、原子力がベストではないことを学ぶ。上記④と同様である。政府や電力会社が挙げている化石燃料枯渇問題や地球温暖化問題は解決可能で、それよりも、福島第一原子力発電所のメルトダウン事故に代表される放射線のリスクの方が重大な問題であることを認識する。
⑦有力町会議員である父の考えは明確である。地域振興と雇用維持のためには原発が必要不可欠であり、放射線のリスクは怖いが、止む無しとみなすものである。
⑧敦は、ネットで調べたり、原発に詳しい職場の先輩の話を聞いて、情報を分析し、自分の答えを出す。
ⓐ上記⑦の理由は理解する。しかし、未来を担う子供たちに放射線のリスクを負わせるわけにはいかない。
ⓑ原発の安全神話は、人がミスをしないことを前提にしている。
ⓒしかし、人は必ずミスをする。危険を想定する過程でのミス、実際に事故が起きた時の対処ミス等々のミスをゼロにすることは不可能である。
ⓓそれに加えて、地震大国である日本の自然災害や、テロ等の危険が山積している。
ⓔこれ等を科学的に考慮すれば、日本では原発が不適であることは明らかである。
⑨そして、2回目の家族会議。途中から婚約者も加わり、活発な議論が繰り広げられる。初回は反対がゼロだったのに、今回は、父以外の全員が反対となった。
⑩その父も、婚約者の胎児が動くお腹に触れて悟るのである。「人の命に勝るものはない」と。
★人は時に間違った決断をする。それに気付いた時、勇気を持って是正するのが人の義務である。そうしないと一生後悔するだろう。

❸そして、国民投票・・・・結果は原発反対派の勝利。
★日本では100年経っても叶わない「見果てぬ夢」だが、気分は良い。そんな日が来ることを願わずにはいられない。

❹まとめ
①曲解すれば、原発反対のプロパガンダと言えなくもないが、それで良いと思う。
②何十年に渡り推進してきている、「原子力 明るい未来のエネルギー」に代表される国、電力会社、御用学者、一部マスコミのプロパガンダに比べれば大人しいものだ。
③本作の映画としての完成度は高いとは言えないが、こういう問題を提起し、考える場を生み出したことに意義がある。
④今の日本において、このような作品を世に出した作り手の意欲と実行力を評価したい。敬意を表したい。

❺外部評価
①KINENOTE:3人の加重平均値60点/100点
②Filmarks:27人の加重平均値3.4/5.0
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