叡福寺清子

ラン・ハイド・ファイトの叡福寺清子のレビュー・感想・評価

ラン・ハイド・ファイト(2020年製作の映画)
4.0
高校卒業を目前に控えたゾーイ・ハルさん.スマホなんて要らねと今どきJKには珍しいお方.そんでもって,登校前に軍人上がりの父親と一緒にハンティング(その後美味しく頂きました).もしかしたらレッド・ステイトでは珍しくないのかも(よー知りませんけど).でもその父親と最近ギクシャク.
そんなゾーイさんですが,一緒に登校してるルイス君からプロムに誘われます.突然の事に動揺し,おもわずトイレに逃げ込むゾーイさん.そのタイミングでカフェテリアにワンボックスカーが突撃!隣の晩ごはん!!降りてきた4人の学生は銃を乱射し,一瞬で占拠してしまいます.その異変に気づいたゾーイさんですが・・・

学生による校内銃乱射事件がしばしば発生するUSA.でも本作は突発的ではなく,長期間そして入念なる計画を練ったテロ行動でした.事前に数か所を放火し緊急車両の出動を撹乱,緊急事態における学校のSOP把握に先手先手で対応,占拠したカフェテリアの模様をライブ配信.高校生の計画とは思えない手腕でした.その学生テロリストに一人立ち向かうゾーイさんは,もちろんジョン・マクレーンやケイシー・ライバックのように荒事に精通しているわけではありません.ただのJK.なのでしょっちゅう射たれます.怪我も沢山します.銃撃戦なんてノンノンノン.もっとも父娘揃ってワンショットで射殺しちまう,凄腕スナイパー(娘の方はわざとワンキルしなかった疑いアリ)なんですけど.
本作がただのアクション映画に留まらなかったのは死生観故の事でした.18歳の若者が母親を失った事実を受け入れられず,未練をいつまでも引きずっています.それが故に母親は成仏できない,なので事あるごとにゾーイさんの目前に現れます.一方で,将来ある若者が,同じ学校の生徒達によって,その生命を散らしていきます.どんな理由があったとしても,奪われていい,失っていい生命なんてないと,作品からは聞こえてくるようでした.
理由といえば,ゾーイさんはヲタク風テロリストと対峙した際,その理由を尋ねます.返ってきた答えは「小学生の時,イジメっ子に衆人環視下でパンツまでずらされた.それ以来,ずっと皆が俺をバカにするから」でした.ゾーイさんは「自意識過剰だったり,ひねくれすぎちゃうん?」と説得しますが,その会話を聴いて「あぁ,なんやかんや言うでもゾーイさんも明るい場所にいる人間なんやなぁ」と嘆息した次第.実際,テロリストさんは自意識過剰でひねくれすぎなのかもしれませんが,本質的にはイジメっ子がイジメなければ,件の学生はテロ行為に及ばなかったはずです.そこをすっ飛ばして,犠牲者を説得するのは,結構無理ゲーな気がいたしますが,いかがかしら.

なお,ゾーイさんの中の人を観て,「ジェニファー・ローレンスの2倍希釈みてぇやな」と思った方は挙