アニマル泉

罠を仕掛けろのアニマル泉のレビュー・感想・評価

罠を仕掛けろ(1949年製作の映画)
4.5
罠、スパイ、裏切り、誰が敵か解らないのがフライシャーの世界だ。本作は罠の仕掛けあい、密度の濃いフィルム・ノワールになっている。フライシャーはいきなり殴る。殴り出したら凄まじい手数の殴り合いになる。フライシャーはいきなり撃つ。撃ち合いは銃弾の嵐になる。
「夜」の場面が素晴らしい。濡れた路面に照り返す街灯が艶めかしい。閉店して誰もいない道をバーバラ・ペイトンがまっすぐこちらへやって来る、カメラ前でいきなり右に引き込まれる、逃走しているロイド・ブリッジスと2アップになる。シャープだ。
フライシャーは縦構図が好きだ。偽札作りのアジトの階段、縦廊下、そしてクライマックスの操車場だ。車両と車両の縦の隙間の逃走、車両の下の縦の隙間、車両の中、そして車両の屋上へと高低差を移動しながら縦構図の逃亡と追跡が面白い。「札束無情」の飛行場もそうだが、大きな乗り物で物語が決着する。
フライシャーは自動車が出てくると活きいきする。
本作はなかなか主人公が判りにくい。前半は逃亡犯のブリッジスで後半はTメンのジョン・ホイトになる。この判りにくさは「札束無情」に似ている。
フライシャーは「鏡」や「ガラス」も主題だ。コップは割られ、自動車の窓ガラスは砕かれる。ミラーショットやガラスへの映り込みも巧みだ。取引現場を逮捕しようとする場面、開店準備を装うTメンのショーウィンドウごしとショーウィンドウの映り込みで犯人たちの動きが描かれる。
偽札の映画である。盗聴も重要なモチーフだ。「取引き」「帽子」の主題をあらためて考えたい。
本作はローアングルが多い。壁に落ちるストライプの影、光と影は相変わらず見事だ。イーグルライオンフィルム製作。
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