ニューランド

罠を仕掛けろのニューランドのレビュー・感想・評価

罠を仕掛けろ(1949年製作の映画)
3.4
☑️『罠を仕掛けろ』及び『カモ』▶️▶️
生涯を通じ、B級からA級·タイトからはみ出す気配·子ども向けから大人狙い·微笑ましさからおぞましさ·あらゆるジャンルを手掛けたような巨匠(に違いないが、そういう呼び方はされてない)R·フライシャーだが、観た範囲でいうとこれ見よがしのイメージをアート的に単発的に打ち上げることもなければ、品のいい完成品としての全体纏め上げに走った作品もなく、ただ俗っぽくも求められる映画に向け、瞬間毎の適切で形容を思い付く暇もない映画そのものの筆致を表し持続させる奇跡を実現してきた人だと思う。『トラ!トラ!トラ!』の監督として黒澤と並置された時は、子供心にアレッと思ったが、遜色はなかったなのだと今にして思う(時流に素直にのる作家で、当時は腐敗·ダーク系多かったが)。
『Tメン』シリーズみたいで、財務省下のシークレット·サービスの贋札摘発を描く本作は、1人捕まり口割らずも口惜しい筈の囚人を味方につけ、たのかまた寝返られたのか、ぐるぐる真偽·真意のあり方廻る序盤の渦、女と対照的チャーミングさの2人の男、強圧的でなくも極りまた動き出す·思わず響く音出し·急な銃撃·贋札原版への執着·白光感電死等の極め·細部が光る後半、全体にもしっかりとした深めをそう無理な力を見せつけない·よりしっかりした構図·焦点·切返しの堅固·的確で示すスマートさ+(寄る·横や廻りーかけてはCutの)移動が加える張り詰めを絶やさぬ持続力(マンのような視覚的·構成的うねりが惹き付けるわけではない)、らに変奏も、基本ベースは、様々に人の組合せ·絡みは変わっても、観客として期待するベースや価値観の変化や強化が見えくるわけでもなく、動かされる巾が変わらない本質の鍛え上げられてきた過去の不可思議さが透けてスタティックにある種心地よく見えてくる、これみよがしのポイント打ちの効果を逆に排した映画特有の、基質が示されてくるだけの事。ワクワクとは別の、より近く確かな手応えだ。
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予定になく、興味も薄かった本作を観ようと思ったのは、本命1本『カモ』が朝11時からという、やっと床について寝付く時間スタートばかりで、最終日無理して観に行って案の定かなり寝入った不完全燃焼からだった。しかし、本当の意味での、他アートを窺わせる映像美の粋や映画内様式のシャープな力量、描写の(社会·現実的な)本当な正確さ、らを無視し欠いたその小品は、映画が映画足るに的確であることだけの素朴·ストイックさだけで成り立っていて、献身度·純度·密度がストレートに力みなく実現されてる、銘品であるは、そんな最悪体調でも分かった。いつか午後の回とタイミングあったら醍醐味を味わいたい。ショットの繋ぎ·角度変は深くなくも、着実で相互にショットのけつと頭がカブリもし、流れを変に勢い付かせない、只見事に純粋につき進む。鏡写り込みを視野に·赤ん坊泣かせ·車のやり過ごし合い·レールに物挟む等の気転·ポイント思いつき効果がストーリー云々ではなく純粋に鮮やかに瞬間だけを屹立し抜き·その前段階の互いを微かに降りくる勘で軽いデンキを走らせ合ってる。アニメ風·ネガ風·OL·急に速く寄る等の中盤のトリッキーさ(夢イメージ·うなされ)は味付けでしかなく、男女の会話の力関係·色々調べられるスリル·人種や職種を超えた誇りか卑劣かに染まる両極存在性·スクリーンプロセスか闇中接近してくる事故仕掛けたい列車のカービング·中華街他の街の佇まいと運動入る立体感、の方が周りを単純に固めてる。
捕虜同士内親友殺し·敵日本軍内通の容疑で軍法会議前も、記憶喪失·頭に重傷で入院中の男が、逃亡し親友の妻と仲を深めつつ、真実を洗い、頼りにしてたもう1人の友の、真犯人·裏切りとハメのあり方を暴いてく。
2本の間、睡眠を取るために入ったが座れず二本立の次で心置きなく休むまで立見で、途中から軽く流して観た『朝が来る』が構成·描写が極めて斬新な上に歩を緩めず、痛みが染み込むような映画を超えた映画と、アート的にも突出、流石昨年の最高作の1本と謂われて当然と思うも、点数をつけると映画の内の映画でしかない、この映画と同じ位となるのが、何に向けられてるのか今一つハッキリしない映画というメディアの面白く奇妙な所か、などと眠気眼で感じもしてた。
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