飛行艇

アザー・ミュージックの飛行艇のレビュー・感想・評価

アザー・ミュージック(2019年製作の映画)
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行ったことがない街の有名なレコード屋が映し出される。その店はあと数日で閉まるという。その街にとって、なくてはならない存在故に閉店するなんて信じられないと涙する男性。私にとって縁もゆかりも無い店だったが、見進めるうちに情が湧き、時に涙し、その歴史の変遷に深い感慨を憶えてしまった。

音楽好きが何度も足を運び、アーティストがCDを持参してライブしていた。お店に色濃く残る思い出が、スタッフによって少しずつ片付かれていく。その様は「悲しい・寂しい」だけでは言い表せない。

特に印象に残ったのが、スタッフの手作り「ポップ」だ。陳列されたレコードの傍にその作品に合わせたデザインで、作品情報が記述されている。スタッフお手製だというポップは、時に溢れんばかりの文字量であったり、一言でその作品愛を記していたりして、スタッフの音楽愛に圧巻された。

行きたいと思ってもあのレコード店は閉店していて行くことができない。だが、日本には様々なレコード屋が点在し、沢山の音楽との出会いに溢れている。それは、海外でも。そこに足を運び、音を手に取って、気に入ったら買う。その行為は、年々低減している。しかし、時にはそこでしか得られない「出会い」を求めて、足を運ぶことで人生はさらに豊かになるかもしれない。それをこのドキュメンタリーは教えてくれた。
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