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アザー・ミュージックの8888のレビュー・感想・評価

アザー・ミュージック(2019年製作の映画)
4.5
音楽を語る上でこんなに重要なレコードショップがあるなんて知らなかった。
今を生きる平成生まれの自分は、音楽を知るという面では自由の牢獄というかなんというか、とても不自由な時代に生まれてしまったなと思う。中学生になった頃には周りはみんなサブスクで音楽を聴いていた。当時自分はサブスクに入れずcdを買ったりレンタルして限られた音楽を聴いていたからサブスクがとても羨ましかった。しかし、いざサブスクに入れるようになったらなんとも言えない虚無感に襲われた。検索すればほとんどの曲が聴けてしまう。それは趣のある音楽との出合い方ではない気がした。サブスクで音楽を聴くことは音楽を選択する行為を私たちから奪ってしまった。
アザーミュージックで起こる店員と客の会話を聞いて衝撃を受けた。これこそ音楽と出会うことだと思った。音楽が好きなバカが語り合って「このアルバムは聴いた?」って言われて新しい音楽に出会う。客はそれを信頼して「その曲」を買う。一枚一枚の重みがそこにはある。今の音楽には一曲一曲の重さがどんどんなくなっていってしまっている。自分の去年のSpotify の一年間の記録では確か1600組以上のアーティストの曲を聴いていたがおそらくそのほとんどのアーティストの名前を覚えていないような気がする。しかし一度は聴いているからと知った気になってしまっている自分が少しいる。とても恥ずかしい。この作品に出てくる店員を見ていると圧倒される。自分の浅はかさに恥じらいを感じる。
自分にとってこの作品はとても大切なものになった。何度も見返したいのにそれがなかなか叶いそうにないのが悔しい。
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