カルダモン

アメリカン・ユートピアのカルダモンのレビュー・感想・評価

アメリカン・ユートピア(2020年製作の映画)
5.0
12/27追記
大晦日に新文芸坐では強制スタンディング上映というのをやるらしい。いいな。。行きたい、けど行けない。けど行きたい。この映画の難点は立ち上がって踊りたくなること。椅子におとなしく座ってられない。

-----------------
12/27再鑑賞
何度観ても冒頭から全身が痺れる。
脳について、神経のつながりが大人になるにつれ、赤ん坊よりも少なくなる。我々はだんだんバカになっているのか?と自問しつつ、しかしそれは個性の成長だと肯定する。さらにショーのラストでは、我々の脳神経のつながりは少なくなっている。しかしその繋がりを取り戻すことができる術を持っていると、もう一段階肯定してみせる。

in早稲田松竹
-----------------

12/24追記
生のミュージカルで観ていたら、おそらくまた別の感動だった。でもこれは映像作品でなければ起こらなかった感動だと、観終わって感じる。遠い地域にいるからこそ、同じような状況であったり違った側面であったり、あるいは劇場から飛び出していく彼らの姿が俯瞰され、もう一度自分と地続きにある世界だと意識できる。

----------------------------

7/7 再鑑賞
スクリーンで観られるなら何度でも足を運びたい。それぐらいに音を全身で感じる悦びがこの映画にはあふれてる。音楽の力に迷いがない。楽曲がとても強い。それも刃のような鋭い強さではなく、じわっと地面を底上げするような。歌ってる内容は半径100メートルくらい。家の話だったり街の話だったり。一転してジャネール・モネイの楽曲『Hell you talmbout』のメッセージも背中合わせにある。だから舞台終演後にメンバーがチャリで帰るシーンにもグッとくる。この素晴らしいショーが絵空事のユートピアではなく地続きであることが伝わる。この街で、この土地で、この家で、この人達と共に暮らしているということを強く意識する。

in立川キノシネマ スクリーン3
----------------

試写会にて。
素晴らしいショーでした。観終わったあとにはライブに行った感覚と同じ余韻に包まれていて、久々に音楽を全身で浴びる心地よさに触れた気がしました。
大音量上映ということで、音が耳と体を貫いて、スタンディングのライブハウスで上映したら最高だなーと思いながら、シネクイントのフカフカのシートに腰を埋めつつ心は踊っておりました。もうね、楽曲が全部素晴らしい。でもってパフォーマンスも素敵に楽しい。すべての機材と楽器をワイヤレス、ケーブルレスにして体に固着させ、縦横無尽に裸足で舞台を動き回る。何にも縛られていないその開放的な気持ちよさがステージングデザインからも溢れ出ていました。プレイヤー自身が楽器であり声であり集まった時に音楽が生まれる。そんな力が浮き彫りになっていると感じました。

誰かのユートピアってのは誰かにとってのディストピアなのかもしれない。ユートピアってのはそう簡単に見つかるもんじゃないし、作れるものでもないし、幻想に過ぎないのかもしれないけど、このパフォーマンスをみていたらなんだか可能性を感じられるんですよ。


元トーキングヘッズのデイヴィッド・バーンが11のプレイヤーと創り上げたブロードウェイの舞台作品を、スパイク・リーが映像作品として監督。そんな枕詞も不要なくらい誰が見ても楽しめるエンターテイメント作品になっていると思います。