けーすけ

クライ・マッチョのけーすけのレビュー・感想・評価

クライ・マッチョ(2021年製作の映画)
3.3
1979年アメリカ・テキサス。かつてロデオ界のスターであったマイクは、怪我により一線を退き孤独な人生を送っていた。ある日かつての雇い主より「元妻が引き取っている息子のラファエルをメキシコから連れ帰ってきてほしい」と依頼を受けた。誘拐ともいえる仕事ではあったが、元雇い主への恩義を返すためにマイクはメキシコへ向かう・・・








2021年で91歳となったクリント・イーストウッドの監督、出演作品。
老人&少年&ニワトリ(!)によるロードムービー。

登場人物に大きな年齢差があったりするバディものって結構好きなので期待してたのですが、本作はひたすらゆったり淡々と進み、これといって大きな出来事もなかったので少し肩透かしを食らった気持ち(寝不足で鑑賞するとおそらく寝落ちるレベルなのでご注意を)。

それでも雄大な大自然の風景がめちゃめちゃ美しく、道中出会った人との交流などにもほっこりできる部分はよかったです。



道中をともにするラファエル少年は、アルコール依存症の母親から離れストリートで闘鶏をして暮らしており、他人を簡単に信じたりしないような性格。
そんな彼がマイクとの出会いでどのような事を知り、体験していくのかがひとつの見どころ。

そしてマイクもかつてはロデオ界のスターに君臨するカウボーイだったが、落馬事故により落ちぶれ、妻子もなくして孤独な暮らしを送っていた時にラファエル少年に出会う。ラファエルへは厳しくも接するが、決して見捨てたり見放す事は無い大人の愛情がいい距離感で描かれておりました。
そしてラファエルと過ごした道中で、マイクが歩んできた人生を振り返って語るセリフがなんとも心に沁みるものとなっておりました。



ラファエルが可愛がるニワトリは「マッチョ(強い)」と名付けられ、腰抜けなどといった意味合いでのチキンとの皮肉が笑えるものとなっており、このニワトリが物語の要所で大切な役割を果たします。尚、マイクは「カーネルサンダース」という名前に変えようとしたりしますが、食べられる事は無いのでご安心を。笑
ほんとにいい演技をするニワトリなのでご注目ください(全部で11羽が演じているらしいです)。



イーストウッドも悪党を一撃でぶちのめしたり、乗馬したりと元気そうではあるものの、やはり足腰には見ていて不安を感じてしまう部分も。
飲んだ水や食事が体にあわず「(お腹の)調子が悪い…」という場面も映画の演技という事を忘れて一瞬本気で心配してしまった。笑

他、麻薬を車で運んでいると警察に勘違いされて捜査を受けた時にも「俺は運び屋じゃない!」といったようなクスリと笑えるくだりも随所にあって面白いです。



クリント・イーストウッドの人生観が反映された映画のような気もします。ゆえに鑑賞するときの自身の年齢によっても受け止め方が変わってくるような気もしました。ある程度歳を重ねた後に改めて鑑賞したらどんな感想になるか、それも楽しみな映画でした。



2022/01/12(水) 試写会にて鑑賞。一ツ橋ホール 12列19番
[2022-002]
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