TaiRa

クライ・マッチョのTaiRaのレビュー・感想・評価

クライ・マッチョ(2021年製作の映画)
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映画極め過ぎちゃって適当に撮ってる様にしか見えないの草。

80年代に実現しなかった企画をわざわざ引っ張り出して来たイーストウッドの終活映画。40年近く遺作みたいな映画作り続けてるから今更だけど、これもめっちゃ遺作。『運び屋』でまだ出るんかいって思ったが、あれは最終作くらい自分の監督作が良いって思いもあったのかもね。ここ10年は実話をさらっと撮る省エネっぷりを極めてたけど、今回久しぶりのフィクションで、やろうと思えばいくらでも盛り上げられるのに今まで以上にさらっと撮ってる。もはや面白いのかどうかもよく分からないが、どう見てもお爺ちゃんのイーストウッドが女にモテモテだったり、追手の屈強な男をグーパンチ(古典映画でしか見ないアレ)でやっつけたり、映画でしかありえない現象が次々表現される。動物にもモテるし、町中の人もイーストウッドを好きになる。何を観てるのかよく分からないが終始ヴァイブスが良いので無限に観ていられるのも凄い。主演作はニック・シェンクに書かせる決まりでもあるのか、今回も彼の脚色。撮影はトム・スターンと別れてからイブ・ベランジェを招集してたが、今回はマシュー・ヴォーンやMCU諸作を手掛けてるベン・デイヴィス。彼が撮ってる作品じゃないが結末が『エンドゲーム』と同じってのは偶然なんだろか。「アメリカの最後」という点では共通する。今作のイーストウッドは徐々に「アメリカ」から「メキシコ」に染まって行く。車も衣服も現地の物へ。そしてメキシコの少年がアメリカへ、アメリカの老人はメキシコへ帰って行くのは、「アメリカ」がこの先向かう未来を表しているとも言える。ポスト・トランプ時代にイーストウッドがわざわざ主演までして提示した「アメリカ」がこれだと思うと感慨深いものがある。もう流石に言い残した事ないと思うけど、あの爺さんまだまだ映画撮りそうだな。
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