空海花

レミニセンスの空海花のレビュー・感想・評価

レミニセンス(2021年製作の映画)
3.7
最近は滑り込み鑑賞ばかりでヒヤヒヤもやもやしているのですが(間に合わなかった作品も多々😢)
これは丁度時間が合ったのでIMAXレーザー、初日鑑賞。
初日から上映回が少なかったため早く終わりそうな懸念があったのもその理由。


製作ジョナサン・ノーラン
監督・脚本は妻のリサ・ジョイ。
人間の記憶に潜入(レミニセンス)し
その記憶を360度再現する“記憶潜入エージェント”のニック(ヒュー・ジャックマン)は、検察から事件の捜査を依頼される。
彼は事件の鍵を握る謎の女性メイ(レベッカ・ファーガソン)の行方を追うことになるが…

舞台は世界が海に沈んでしまった近未来。
グリーンランドの氷床の最高地点で
観測史上初めて雪ではなく雨を観測したニュースも記憶に新しく、
そう遠くもないんだろうかと考えてしまった。
この水の都市の映像は美しく
この映画のシンボルのように、“水”は繰り返し現れる。
海上を走る電車は『千と千尋の神隠し』のオマージュなのだとか。
美しいシーンなので日本人として何だか嬉しい。

多くの方が言うように、宣伝とのギャップにはかなり驚いた。
ポスターは『インセプション』だし
時を扱うのは『メメント』か『TENET』か。
はたまた水とヒュー、そしてミステリーなら『プレステージ』か。
しかし漂う古き良き時代の匂いや
様々な既視感に、クラシックなノワールらしさを感じ、頭を切り替えることができた。
(何かもう変な邦題や宣伝ありすぎるのに慣れてきたせい笑)
温暖化現象や格差社会など現代から通じる世界観でありながら、どこか古風な雰囲気は、“一目惚れ”を受け入れるために必要だった。

ファーストシーンの水没都市は実際に建設されたものだし
何より記憶を360度の空間で再現されるあの映像は製作チームが開発・完成させた実際の映像。
通称「ホメロッシュ」
となるとこれはやはりSFであり、
実写撮影にこだわるクリストファー・ノーランと同じくジョナサンとリサ夫妻もこだわって見せた。
膨大な記憶と3D映像の再生の“トリック”
ノーラン推しの宣伝もそういったところを推してくれたら、もっと素直に楽しめる人が多かったのではないかと思ってしまう。
記憶、いつの間にすり替わる過去…そしてラブストーリー。日本人好みな話だと思うのだけれど、SF超大作を強調しているからその層は観に行かないかもしれないというジレンマ…

そしてファム・ファタール、レベッカ・ファーガソンの美しさ。
『グレイテスト・ショーマン』でも共演のある二人はとても絵になる。
謎の女、彼女が持つ色々な面を
ヒューと共に知っていくことになる。
『グレイテスト・ショーマン』では吹替だったけれど、ちゃんと歌も上手くて…

あとタンディ・ニュートンのアクションがかっこよすぎて
「次は助けに行かない」の台詞には内心ガッカリしてしまった(笑)
ヒュー様は元軍人だけれど、その時に脚を痛めているようであまり強くはないから…
ただやっぱり強いイメージが拭えないのかもしれない。あの肉体だし。
醸し出す哀愁があまり感じられなかったのが残念。
ヒュー様の起用は監督直々のオファーだったそうで。


男と女の時間の捉え方というところに
古臭さを感じない訳ではないけれど、
実はこの物語はそこでは終わらない。
未練や女々しさにも映る感情、
そこに男も女も、良いも悪いも関係ないのではないかな。
装置にもまた水。
記憶を溶かし、容器の形に自在に形を変える。
傍に添えられた花。
最後に映される水の意味
その余韻はとても優しかった。


劇中音楽はラミン・ジャヴァディ
主題歌「Save My Love」を歌うのは新人シンガーのLonr.
監督は音楽以上に昔に連れ戻してくれるものはないと語る。
音楽こそタイムマシン。
リサ・ジョイが監督したMVは、ギリシャ神話のオルフェウスとエウリュディケもモチーフにしており、本作にもその片鱗が垣間見える。
嘆きの力。


2021レビュー#162
2021鑑賞No.360/劇場鑑賞#62


夫妻で製作のドラマ『ウエストワールド』も興味があるのですが、なかなか手が出ません。
昔の映画版は結構好きです😇
空海花

空海花