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レミニセンスの3104Arataのレビュー・感想・評価

レミニセンス(2021年製作の映画)
3.6
<22年07月>
【叙情的で哲学的で深い愛の物語をサスペンスとSF要素で味付けしました】
・2021年公開のアメリカのSFサスペンススリラー映画。
・戦争と温暖化による海面上昇でもはや希望のない世界に変わった近未来。移動は船が必須という世界の中で、マイアミに住む元軍人の主人公ニック。彼は、戦争時代に捕虜から情報を取るために使っていた過去の記憶を取り出す装置を使い、希望のない世界に住む人々に過去の良い思い出を追体験させるという商売をしていた。そこに突如現れた謎の女性メイ。落とし鍵の場所を知りたい、という彼女の要望に応えるために過去の追体験をさせて在りかを突き止める。それから二人は恋をしていくが、ある日突然彼女が消えた。ニックが彼女を追う中で見えてくる真実。なぜ二人は出会い、この先、どうなっていくのか… という大枠ストーリー。

[お勧めのポイント]
・叙情的×哲学的な台詞が素敵
・絶妙に融合したSFと愛とサスペンス
・連ドラの延長線上のような映画であり、映画しか見ていないのに連ドラから観たような満足感
・恋愛-恋=大人の愛の物語

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[物語]
・人の過去を追体験させるニックの職業は、あらゆる物語を生み出す可能性があるものです。故に、まるで1話完結型の連ドラがあって、その締めくくりとしてこの映画が存在しているかのような奥深さを感じるものでした。中盤辺りから少しだれ気味に感じて、「なぁんだ、単なるヒューマンドラマにちょいとサスペンス要素が足されただけか。わざわざ映画で観なくても…」なんて感じていましたが、終盤戦で一気に畳みかけられると「す、すごいかも…」に一変。笑
・しっかりと見応えのあるサスペンスに仕上げてくれているのはもちろん、そこに「愛」というテーマが絶妙に混ざってくるところが、「犯人は誰だ?!」「真相は何だ?!」というサスペンスとは一味も二味も違う魅力を感じました。戦争と温暖化による海面上昇で、希望を亡くした近未来の社会もどこかリアリティのあるSF設定で、共感度高めです。

[演出]
・「記憶の魅せ方」が素敵です。一昔前なら、記憶映像をモニターに映して終わりなところ、3Dのリアルな表現。しかも、謎の繊維に光が当たることで、そのシーンが具現化するという設定も理屈はわからなくとも、練り込まれた設定であることが理解できるとともに、それがリアリティとなってよかったです。
・多少のアクションシーンはありましたが、なくてもよかったかなぁという印象。笑 ただ、映画(≒アトラクション)の要素として、緩急をつけるためにいれらたものかと思います。家でDVDで観る分には不要でした。笑

[映像]
・冒頭の鳥観的なカメラワークは一気に引き込まれます。これこそ、映画館で観たかったぁ…となるシーン。そして、そのシーンこそが近未来の世界を端的に表現してくれています。一石二鳥。
・近未来ですが、どこか荒廃した世界。それが妙にしっくりくる映像になっています。雰囲気がありました。

[音楽]
・際立って感じたことはありません。

[演技・配役]
・主人公ニック役のヒュー・ジャックマンさんは安定すぎます。かっこよい。
・謎の女性メイ役のレベッカ・ファーガソンさんは、角度やシーンによって強さと可愛らしさが変化して見える演技をされていました。これぞメイの「謎」とマッチしていてよかったです。
・この物語で一番好きでした、ニックの相棒エミリー。タンディ・ニュートンさんが演じられるようです。なんといいますか、優しくも強いんです。暴走しがちなニックをいつも彼女の止めてくれる、助けてくれる。ニックに救われたから、とここまでする彼女の大きすぎる器と強さがすごい。一方、母としての弱さも持ち合わせているところに人間味を感じる。このバランスの良さがとても魅力的で惹かれました。

[全体]
・世界を巻き込んだ陰謀とか、そんな大それた話じゃないんです。近未来の世界で、記憶の追体験をさせる仕事をしているニックに起こった(世界的にみれば)小さな出来事、を描いているだけ。なのに不思議と引き込まれていく。謎とキャラクターと愛と世界観に。
・そして、引き込まれるもう一つの要素が、叙情的であり哲学的な台詞の数々。その台詞はスクリーンの内側を飛び出して、私の現実世界でも役立つかも?!と瞬発的に思うようなものばかりでした。以下に、そのいくつかをご紹介します。(厳密な台詞ではなく要約です)
 ※ネタバレになる可能性もありますので、ご注意ください。




 - 彼は非難しないけど、私を見る目は変わる。あなたは非難するけど、きっと私を見る目は変わらない。だから話すの、真実を。
 - 俺は大事なものを何もかも取り逃がしてきた。一番の幸せは過去にはないんだ。未来で君を待っている。
 - 過去は人にとりつく。過去とはある瞬間の連続。それぞれの瞬間は純粋で完成している。 - 過去は幽霊ではない。我々を覚えてもいない。幽霊がいるとしたら、過去にとりつく我々だ。過去にとりついてもう一度見ようとする。また会いたい人、前に見逃した何かを。
 - 寂しさは世界の一部なの。もし悲しさがなければ、幸せも味わえない。昔私たちは結末を選んだの。彼は過去へ、私は未来へ。どちらも正しかったって信じたいわ。

・思い出して悲しんだり、後悔したり、楽しんだり・・・あらゆる過去への執着を良いとも悪いとも言わない感じ。人の本質を少し変化球で語らう感じ。それによって、自分自身の世界を客観的にとらまえて、より幸せに生きていかなきゃ、とほんのりと考えさせてくれるヒントになりました。
・愛の物語としての見応えも十分あります。恋愛の「恋」を抜いた「大人の愛の物語」として愉しまれるのも在りかと思います。ありがとうございました。

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